2021年12月31日金曜日

還暦前夜祭なんだが

  あと数時間で2021年が終わり、新しいカレンダーがめくられる。来年は寅年。年男の私は、還暦を迎える。昔、アホな若者だった自分の目に、60歳はひどく年寄りに見えていた。なんならどうしていまだに社会人やってんのくらいに失礼な思いすら抱くことも。今こうして自身がその年齢に達しようとしている訳だが、老いを認めざるを得ない部分と、若者にこれは出来ますまいという経験に裏打ちされた自信とが共存する。

 昨日のゴルフ打ち納めもそうだった。四十代前半の若い世代が中心の12人のミニコンペ。ハンデ差で優勝こそ逃したものの、85のベスグロは還暦イブのワタクシ。9番ホールでバンカーの往復ビンタがなければ80切りも望めるラウンドだった。ドライバーの飛距離も負けてない。でもね、打ち上げでしこたま飲んだ老体には、一夜明けた今日も連チャンでプレイするのは無理ってもんです。まあでも、これまでのところは割と上手いこと「老い」と折り合いをつけてこれたのではないかな。心穏やかに還暦を迎える準備はできているつもり。

 大晦日の今夜は、日本の家族から離れて独り寂しい者同士、気の置けない仲間を家に呼んで、残っている酒と食材を一掃しながら歳を越そうという、早い話が飲み会です。コロナに明け、コロナに暮れたこの一年が終わります。無事健康で過ごせていることに感謝しなければなりませんね。どちら様も良いお年を。

2021年12月29日水曜日

エジプトを離れるカウントダウンは少し複雑な心境

  中東の国にいてクリスマスもなかろうと思われるだろうが、ここエジプトの人口の1割はコプト教という古代キリスト教の教徒なので、ホテルやレストランに行くとそれなりにクリスマスの飾り付けがなされている。まあ、とはいえ還暦手前の単身赴任のおっさんにとって、もとよりクリスマスは全く関係がないイベントだから、極めて静かに、淡々と荷造りしながらイブをやり過ごしましたとさ。

 そして有馬記念は当然に的中することもなく、今日は今年の仕事納め。そしてそして今週末には年が明ける。年始早々には後任に引き継ぎをして、1月12日の夜にエジプトを離れる。既に航空チケットは購入してあるし、超過荷物のバウチャーもゲットした。アメリカのビザも取得済み。ワクチン接種証明もある。後は引っ越し荷物を輸送業者に出して、PCR検査を出発前日に受ければそれで5年弱のエジプト生活が終わる。あと2週間。いよいよカウントダウンだ。

 次の任地はロサンゼルス。そう言うと、10人が10人ともこの人事をうらやむ。私自身も勿論、小躍りするくらい嬉しいし、さんざ苦労させられたエジプトを、というかエジプト人から離れたい。でもなんだろう。モヤモヤする気持ちがどうしても晴れない。

 世界がコロナ禍に陥ってから既に2年弱。この間、世界中のあらゆる場所であらゆる人たちがストレスを溜めて生き残ってきた。辛いのは自分だけじゃない、皆んなそうなんだという自己暗示だけを頼りに。だからコロナ由来のストレスは、モヤモヤの原因から差し引かなきゃならない。

 だとすると、他に何が原因だと言うのか。仕事は確かにスッキリしない。今日言ったことが明日のうちに片付くようなお国柄ではないから、どうしたって後任に頭を悩ませてもらわなければならない課題を残してしまう。自分の中でやり切った感を持ちきれない理由はおそらくそこだ。なんだかんだ言って、昔かたぎの仕事人間なんだろうな。

 でもそれだけか。いいや、やっぱり数えきれないくらいゴルフや酒を共にした仲間から離れるのが寂しいんだ。似たような苦労をそれぞれの環境で耐え、乗り越えてきた同志、いわば戦場で同じ窯の飯を食った仲間だ。思い切り後ろ髪を引かれている気がしてならない。

 そんな折、エジプト人スタッフたちから思わぬプレゼントを贈られた。ギザの3大ピラミッドを模したガラスの置き物。透彫が施してあって、なかなか素敵だ。それから、仕事で大いに世話になった一流ホテルの営業マンからも、エジプト最後の晩は是非当ホテルにご宿泊ください、悪いようにはしませんとの有り難いオファー。公私共に苦労させられた思い出ばかりのエジプト人が、最後に嬉しくなるようなことをしてくれる。少し泣ける。

2021年12月20日月曜日

海外生活の偉大な先輩を偲ぶ

  私がケニアの首都ナイロビに勤務していたのは25年も前のことだ。ナイロビにいた約3年の間には、長男が生まれ、アメリカ大使館がテロで爆破され、日本人学校の校長先生が金目当ての輩に襲撃され殺害されるという事件もあった。35, 6歳という若い私はまだまだ元気で、週末ともなればいろんな企業の駐在員の方々からゴルフ、テニス、麻雀、カラオケなどにお声がけしてもらい、ひたすら働いて、ひたすら遊んだ。

 そんな中でも、ひときわ異色を放つ日本人夫妻がいた。ご主人は、日本で誰もが社名を知っている一流企業を脱サラして、独りケニアに渡ってきた人。スワヒリ語を学び、来る日も明る日も地方の中学校を巡っては、整備などされていないグラウンドを駆ける子供たちを観察し、世界レベルの長距離ランナーとして育つ才能を発掘、仙台育英、山梨学院といった高校や、コニカなどの企業に繋ぐ、いわゆるスポーツ選手ブローカーだ。彼が発掘した選手の中からは、ダグラス・ワキウリや、エリック・ワイナイナといった日本でもお馴染みのメダリストも大勢輩出した。

 心ない人からは、「人買い」などと揶揄されることもあったそうだが、彼の動機はひたすら純粋かつ暖かいものだ。ケニアの地方で明日の暮らしさえ保証されない子どもたちが、自分の身体能力一つで数年後にはメダリストにまで成長する。スポーツ界の名声だけでなく、日本の企業にも就職でき、親兄弟たちを十分に養うこともできる。ケニアで食わせてもらっている自分が、こういう形でケニアにお返しできる。とにかくケニアが大好きで、良い意味で化石のように真っ直ぐな人だった。

 その人が、80歳を目前に、昨日ナイロビで逝ったと知らされた。老衰。43年連れ添った奥様の手を握ったまま静かに永眠についたと聞いた。ナイロビ生活44年。日頃からケニアに骨を埋めると言っていたご自身の言葉そのままに。

 Kさん、あなたにはついに一度もゴルフでかないませんでした。麻雀は私の方が強かったけど、いつもあなたの家で卓を囲んだ時の楽しさと、奥様の作る自家製手打ちラーメンの美味しさは、決して忘れません。何歳になってもお洒落で、いつも麦わらのハットを被り、紺色のブレザーと綿パン、足元はローファーでしたね。ついこないだまで、時折くれるメールをいつも楽しく読んでいましたよ。お疲れ様でした。ゆっくり休んでくださいね。合掌。

2021年12月11日土曜日

エジプトのうろこ雲の下で荷造り

  意外に思われる方も多いかもしれない。ここエジプトでも冬は結構寒いのです。朝晩は10度近くまで気温が下がり、風が強い日は薄手のウィンドブレイカーでは不十分。

 今朝は、寒空にうろこ雲が広がっていた。曇ること自体が珍しいエジプトにいて、うろこ雲を目にすることはそう滅多にない。遠く離れた日本の秋冬の空を思い出して、ちょっぴりセンチな気分にしてくれたので、思わず写真を撮ってしまいました。

 ときに、これって、うろこ雲でホントに合ってるんだっけと、ふとした疑問が。これがうろこ雲なら、それじゃあ、いわし雲ってどんなんだったか。モヤモヤをいつまでも引きずりたくないので、すぐに調べましたよ。結果は、同じものでした。何に見えるかという極めて主観的な判断でどちらで呼んでもよく、実は両者は同じ雲を指すのだそうです。

 寒空の下ゴルフをした後は、荷造りです。ざっと見積もって、段ボール20箱くらいで収まるだろうけど、なにせ残りひと月の間は日々の生活をしながらなので、まだ詰められないものが結構あるから、はかどらないことこの上ない。半年近く前から分かっていたことなのに今の今まで何もしてこなかったおのれの怠惰が招いていることとは言え、やや途方に暮れているのが現状。ある日いっぺんにまとめて集中して取り掛かるという無茶な計画は捨て、一日一個のペースでやっていけば最後は間に合うだろうと、これまた無計画に近いスケジュールを組んでみた。

 今日は、後任者が到着する。ホテルに突っ込んで帰ってきたら、2箱くらいは頑張ろうと今は思っている。

2021年12月5日日曜日

エジプト生活を終えるのだが(まだ観てない場所もあるのにな)

  明日、転勤の辞令が出る。数時間フライング気味の投稿になるが、まあ許容範囲だろう。これまで約4年8ヶ月ほどを過ごしたエジプトをいよいよ離れることが現実のものとなるわけだ。とはいえ、去年の3月からこれまで2年弱の間はコロナ禍で国内旅行すらほぼ出来なかったから、まだ観ていない場所がたくさん残っている。楽しいことばかりではないエジプト生活ではあっても、そういう意味では後ろ髪を引かれる気持ちがないと言ったら嘘になろう。

 そんな折、古代遺跡の宝庫ルクソールで先の11月25日、古代エジプト考古学史上たいへん大きな意味を持つイベントが行われた。カルナック神殿とルクソール神殿を結ぶ全長約2.7kmの「スフィンクス参道」が、長年に及んだ修復を終え、お披露目された。参道の両脇にはアメン・ラー神の守護とされる雄羊の頭部を持つ小型のスフィンクスがずらりと1,000体以上立ち並ぶ。私もここへ2度訪れたのだが、その頃はまだ参道に崩れた瓦礫が散乱していて、途中で途切れていた。それでも、日本からやってきた女子たちは、ライトアップされたルクソール神殿の夜景に涙していたっけ。2つの神殿が参道で繋がれ、3,000年以上前の新王国時代の栄華を想起させるであろう壮観な景色を、是非この目で観てみたい。果たしてエジプトを出発する前にそのチャンスがあるだろうか。

 さて、後ろ髪も悪くないのだが、転勤ということはつまり、日本に帰国することなく次の海外ポストに向かう身なのです。そして私が次に行くのは、なんとアメリカ西海岸。ロサンゼルスだぜ。まあ正直なところ、どんなにポーカーフェイスを装わなきゃと努力しても、滲み出てしまうニヤニヤを隠しきれません。大谷翔平クン、お待たせしました(待ってないか)。ようやく君が100マイルのストレートを投げる姿を、そしてセンターオーバーの大ホームランを打つ姿を、アナハイムのボールパークで応援することができるんだよ。こんな素晴らしいことがあるだろうか。ハァハァ。

 いや、待て待て、モチつけ。出発までにはまだひと月ちょっとある。その間に、引っ越しの荷造りをして、後任との引き継ぎをして、山のような書類をファイルして。。。あれ?間に合うのかしら。

2021年11月25日木曜日

辛いは辛い(からいはツラい)

  昔から辛い食べ物が苦手なのです。ひと口ふた口食べただけですぐに頭皮から汗が吹き出し始めたかと思ったらずっと止まらなくて、首から上ぜんぶがびっしょりになっちゃう。ハンカチなんかじゃとてもじゃないけど間に合わないので、タオルなしで辛いものを食べるのはあまりにリスキーだ。しかも、その後何を食べても味が分からなくなっちゃうから、お金払うのがバカらしく感じてしまうのよ。だから、わざわざ坦々麺を選んでおきながら「ぜんぜん辛くしないでね」と注文すると、店員のお姉さんからは怪訝そうな顔をされるわ、友人からは笑われるわで良い思い出がない。

 そんな私でも、蒙古タンメン中本なんかの動画を見たりすると、ちょっと挑戦してみたくなる時がある。北極は到底無理としても、蒙古タンメンくらいならひょっとしたらイケるんじゃないかと。だって、しょこたんなんかも、辛さの中にしっかり旨味があるとか言ってるし。てなことで、スーパーでこんなもんを見つけたので、買ってきて家で作ってみた。

 どうやら韓国産の輸出商品らしいのだが、真っ赤な袋に黒い火を吹いている鳥らしきキャラが描かれていて、中ボスくらいの迫力はあろうか。そして密かに「2 x Spicy」という邪悪な文字も見逃さない。

 適当に野菜とか卵とか入れちゃえばマイルドになっちゃうんじゃね?みたいなノリで調理してどんぶりに入れてみると、実際、真っ赤だった。

 食べてみた。死んだ。しかも瞬殺。こんな辛いもん、人間の食うもんじゃない。喉も舌も頭皮も全てが熱くて痛い。なのに何故か身体に震えがきて、なんなら寒くすら感じる。なんだこれ。覚醒してんの? それとも何かに転生してしまうの? そして翌朝、トイレでこれ以上ないほどにひどく後悔した。菊◯が弛緩して、腸から煮えたぎる赤いドロドロしたスープをそのまま垂れ流し続けてるみたいな感覚。猛烈に熱い。生まれて初めて、身をもって「辛い(からい)」という漢字が「辛い(ツラい)」とも読める理由を実感しましたとさ。てか、もう一袋あるんだが、どうすんだこれ。

2021年11月17日水曜日

ニッポンの魚はホントに旨いなぁ(回想)

  一時帰国からカイロに戻ってきて半月が過ぎたわけだが、祖国ニッポンで食べた魚の旨さが忘れられない毎日を過ごしている。お金は出すんで食材はワンランク上のものをスーパーで買ってきておくれと細君に頼んだところ、日本酒のアテに食卓に登場したのがこれら。


 金目鯛は一尾3,500円もしたと言って、細君はちょっと興奮気味だった。生姜と砂糖をたっぷり効かせた金目鯛の煮付けが、魚料理の中でいちばん旨いと思う。そして、旬の秋刀魚は目が濁っておらず、新鮮さを物語る。口先がうっすらと黄色みがかっているのは脂が乗っている証拠だと、素人目にも分かる。何よりほんのりと「にがみ」のあるお腹が実に旨い。徳島の友人が送ってくれたすだちを添えて、自然と日本酒が進むこと進むこと。

 そんな幸せな食生活はしかしカイロでは到底望めもしない。実に悲しい。今日は、スーパーで買ってきた鳥のローストを玉ねぎスープにぶち込んで食した。まあこれはこれで食べれなくはないのだけれど、生きていくためだけに食べているってのが嫌になる。海外勤務手当ってのは、日々こういう思いを強いられる代償と考えるようにしているよ。そうでないと精神的にもたないからね。

2021年11月6日土曜日

シン・エヴァを観てみた(今頃?)

  一時帰国したばかりの東京の家で自主隔離という名の軟禁生活を過ごしている間に、劇場で観ることがかなわなかったシン・エヴァンゲリオンを観ることができた。息子がアマゾン・プライムかなんかでアーカイブしていた奴を、iPadで。独りお留守番の昼過ぎ、飲み物、ツマミ、電子タバコなんかを周到に用意して、長い動画だというのでちゃんとトイレも済ませておき、準備万端でバッチ来いとばかりに観てみた。

 鑑賞後の感想は。。。なんだかなぁ。亡くなった嫁と再会したい一心で、世界をめちゃくちゃにしてしまった碇ゲンドウという男の執着心というか粘着力に、ひたすらドン引きしてる間に終わってしまった。いろんな人の解説動画なんかもチェックしてみたけど、どれも「あーそう」って感じで、ストンと落ちない。

 それにしても、綾波ではないレイに人間の心が芽生え始めるシーンには、萌えましたわ。水を入れすぎた風船があっけなく破裂したみたいにLCL溶液に戻ってしまったのはビックリしたけど、初老のおっさんにとってエヴァと言えばシンジでもアスカでもなく、やっぱりレイ一択なのよ。

 てなことを酒を飲みながら考えていたら、件の友人から思わぬプレゼントをいただいた。月間エヴァンゲリオン特別号。表紙も中身も綾波レイ一色。特別企画「本当にあった良い話『あなたと一緒にポカポカしたい』」が収録されているようだ。ビニール袋に入った薄い冊子だが、中身は確認していない。さらに、綾波が描かれたクリアファイルも。友人に100回くらいお礼を言った後、「まあでも、これは開けないけどね」と言い放ってカバンにしまうと、今度は友人が「えぇっ、開けないんすか?」とビックリしていた。だって、こんなもん、いつどんなタイミングで開けるってのよ。そんな心の準備はちょっとやそっとじゃできませんから。

2021年11月3日水曜日

池袋東口最後の聖地〜美久仁小路〜

  東京における私の本拠地、つまりホームグラウンドとして呑み歩く街のことだが、若い頃は中野だった。初めて一人暮らししたのも中野。サンモール街からひと筋ふた筋外れた路地で、自家製の梅干しが旨い居酒屋、オカマのママにさんざ誘惑されたバー、怖いけど優しいヤクザのお兄さん、映画に出てくるような着流しのノミ屋の兄さん、パチプロのおじさんなどなど、若いことだけが自慢の私に、大人の世界の入り口を教えてくれたのが中野だ。

 それが、ここ20年くらいは池袋に替わった。生まれも育ちも池袋という友人がいるのがいちばんの理由だが、いっとき私が王子に住んでいた時も、池袋からならタクシーで1000円ちょっとで帰れたので、銀座や新橋などの都心でやるよりも遥かに便利で、時間を気にすることなく安心して呑めたのが大きい。そんな池袋で呑むといえば、知る人ぞ知る豊田屋だの八丈島といった地元民しか来ない昔ながらの千ベロの店がある西口に専ら足を向けていたわけだが、先日、件の友人が、東口に残る最後の聖地を案内してくれた。

 サンシャインを眼前に見上げる「美久仁小路(みくにこうじ)」がそれだ。ビルの隙間に細い糸を垂らしたような100メートルほどしかない路地は、実は戦後の闇市の頃からあった飲み屋街だそうで、昨今すっかりポップになってしまった東口に今なおこんな昔ながらの風情のある通りが残っていること自体が奇跡的だ。果たしてそこでは、人情味のある小さな構えのお店がひっそりと、しかし暖かく地元客を迎えてくれる。私たちがふらっと入ったお店では、私たちよりもずっと先輩の大将と客のおばちゃんたちが、そこそこ長い知り合いみたいに話しかけてくれる。もっとも、私たち自身もすっかり初老のオヤジたちなので、彼らの側からも、見知らぬ若者に対するような警戒心を持たれることもないのだろう。良い場所を教えてもらった。今度はいつになるか分からないけど、是非また行きたい。それまで残っていてね。

2021年10月31日日曜日

いろいろあったよ一時帰国

  今朝のフライトで、カイロに戻ってきました。練馬の自宅を出てからカイロの自宅に着くまでの間、たっぷり24時間かかった。とはいえ、乗り継ぎ時間の短いイスタンブール経由を利用したので、いつもよりは無駄な時間がほとんどなかったし、日本発着のフライトは結構空いていたから、エコノミークラスでも足を伸ばして眠ることができた。でも、正直なところ、このレベルの長旅は初老の身体に相当堪える。歳だなぁ。

 果たして今回は、ひと月にも満たない一時帰国だった訳だが、いろんなことがあったんす。まず初っ端、日本に到着した翌日に厚生労働省から「アナタの乗った飛行機に羽田空港の到着時抗原検査で陽性となった方がいました。で、アナタは濃厚接触の疑いがあります。地元の保健所にすぐ連絡を入れ、そこから先は保健所の指示に従ってください」と。練馬区の保健所に連絡しましたよ。そしたら、その日のうちに「陽性者の前後2列の範囲の座席に搭乗した方たちは、濃厚接触者と認定します。これから数日間は自宅にこもって、体調の変化に十分気を遣ってください」と。猛烈に迷惑な話だ。で、気が気じゃない数日間を含め、たっぷり2週間、専用のアプリで毎日数回、位置情報と顔映像による追跡確認に対応しなければならなかった次第。まあそうでなくても自主隔離は2週間に変わりはないのだけれど、精神的にキツいわな。結果、おかげさまで体調の変化もなく、感染の事実はなかったと信じる。アストラゼネカ2回接種済みの効果はダテじゃないってことか。

 濃厚接触者認定の名誉を授かった?翌日には、震度5弱の地震に見舞われた。過去の大きな地震があった際はいずれも日本にいなかったので本当にビックリしたし、なんなのもうっていう踏んだり蹴ったりのタイミングだったので、ニホン怖っ、と思ったさ。テレビでは日本沈没っていう物騒なドラマがちょうど始まっていたし。

 感染と余震に怯えながらも、美味い酒を飲んで美味いもんを食ってネットで買い物して見逃していたエヴァンゲリオンを観てというなんともぐうたらな自主隔離期間が晴れて明けると、再び日本を離れるまで僅か10日間しかない。その間に、人間ドック、銀行の手続き、息子たちの買い物、自身の買い物、友人たちとの飲み会、親兄弟への連絡、PCR検査、ハロウィンジャンボ購入(もちろんハズレ)、エトセトラと多忙だ。その間、世の中も、衆院選挙、眞子さんのご結婚など毎日の報道がやかましい。

 あれよあれよという間に楽しい一時帰国は終了してしまい、もうホントに心から嫌だったけど帰路についた。カイロの家の中が大量の蟻で埋め尽くされていたらどうしようという恐怖に駆られていたけど、無事だった。唯一のダメージは、日本からこれだけはという思いで買って持ってきたパターのシャフトが曲がってしまっていたこと。梱包が甘かったんだ。泣きながらぐいぐいと腕力にものを言わせた結果、かろうじて実用にはほぼ問題なかろうというくらいには真っ直ぐに戻ったのだが、もしこれで入らなかったら誰かに内緒で売りつければよろしい。

2021年10月4日月曜日

今日から一時帰国

  今夜のフライトで久しぶりの一時帰国です。昨日PCR検査を受け無事陰性、証明書も入手して、あとは荷物を詰めるだけ。

 日本に着いてからの2週間は自宅で自主隔離という名の監禁生活が待っています。その間の唯一の楽しみは、大好きな焼酎をのんびり飲むことかな。エジプトに焼酎が売っているはずもなく、ずっと我慢を強いられてますのでね。で、オジさん一押しの銘柄がこれ。

 高崎酒造「しまむらさき」。芋です。決して高価なお酒ではないけれど、大人になってから約40年間くらい酒を飲んできた中で、なんならいちばん美味しいと言っても過言ではない。金目鯛の煮付けとか、きんぴらごぼうを肴に、ロックでちびちびとやる至福の時間が待ちきれません。

 とはいえ、隔離明けには恒例の人間ドックが控えているので、呑み食いはほどほどにしなきゃ。

2021年9月26日日曜日

59歳オッサンのアイドル考

  乃木坂46の星野みなみちゃんに熱愛スクープからの活動自粛というニュースが流れて、椅子から転げ落ちそうになった。そう、何を隠そう、私、齢59のオッサンにして、そこそこのアイドル好きオタク予備軍だったのです。大島、前田のダブルセンター時代のAKB48なら全員、乃木坂なら卒業したメンバーを含めてほぼ全員の名前を言い当てることができます。因みに、オッサンの推しメンは秋元真夏タソ。まなったん。ちっちゃくて、実に可愛い。

 アイドルの熱愛が発覚すると、必ず世論は真っ二つに分かれますね。一つは、アイドルというのはファンに疑似恋愛という夢を与える仕事なんだから、ガチの恋愛はご法度だと。百歩譲って、してもいいけどバレないようにやれよプロなんだからという主張。確かに、一人のアイドルに1000人、10000人のファンがいるとして、個々のファンはアイドルから見れば1対1000、1対10000であることを分かり切った上でなお、1000分の1、10000分の1の恋愛関係を夢見る。

 かたや、アイドルとはいえ人格もプライバシーもあるひとりの人間、ひとりの女性なのだから、若くいちばん綺麗なときに恋愛はあって当然、むしろないほうがおかしい。オタクさんたちには残念でした、つうかキモいんだよ。だけど敢えて言わせてもらうとさ、相手も独身ならなおさら、推しメンの恋愛を見守り、幸せを願うことこそファンとしてとるべき態度なんじゃねぇのという主張。だが、オジさんはそのどちらとも少し違うことを思うのよ。

 アイドルは職業としてそれをやっている限り、プロだ。一方、アイドルを追いかけるオタクも、相当の時間、情熱、お金を費やして推しメンの人気と地位を支えている以上、ある意味プロのファンと言える。そして、アイドルの側はいつまでプロとしての姿勢を貫くことができるかが勝負。恋愛に走るなどのゴシップで自らの価値を失うリスクと、一人の女性としての本音との綱引きに勝つか負けるかのギリギリで刹那的に生きている。逆にファンの側では、今はキラキラと虹色に輝いているけれど、いつ弾けて消えてしまうかもしれないシャボン玉を追いかけているようなもので、推しメンに裏切られ酷く傷つくリスクを常に背負いつつも、熱中し、応援する。そうしたアイドルとファンの間に成立するいわば「我慢比べ」みたいな関係性を、オジさんは尊いと思う派だ。世の中のマジョリティはバカバカしいと言うだろうことなど、当たり前に分かっているんだけどね。息子よりも年下の女の子たちが、大人の中で頑張っているのを見ると、無条件で応援したくなる。なんたってみんな可愛いし。可愛いは大正義だ。古代エジプトのネフェルティティだって、クレオパトラだって、ギザかわゆすだったに違いない(ギザのピラミッドにかかっているのは偶然です)。

2021年9月17日金曜日

何をすればこんなに寝違えるのかと

  見事に1ヶ月も更新をサボった。何も書くことがない訳ではない。むしろ、世の中ではいろんなことが起こりすぎていて、それらをいちいち書き言葉にする手間ヒマが面倒で仕方がないのだ。オリパラが終わった、アフガン情勢、メッシのバルサ退団、総理の総裁選不出馬、新型フェアレディZのお目見え、ゴルフの伸び悩み、緊急事態宣言の再延長。。。

 オジさんのそんな忙しい?日々の生活を支える資本は、もちろん肉体である。だが約60年間使い続けた身体の現実は、嫌というほど年相応に満身創痍だ。そんな折、約2週間くらい前に、左肩甲骨の少し内側少し下を痛めた。夜な夜な寝っ転がった不自然な姿勢でiPadを見続けた結果、起きてるでもなく寝てるでもない間に、壮絶に寝違えたらしい。2、3日すれば治るだろうというナメ切った経験則は完全に裏切られ、今もまだ痛みが続いている。特に、ベッドに横になったときに、どんな姿勢をとっても痛くて眠れなくなったところで、ようやく湿布薬を貼るという当たり前の対処療法を思い出した。

 いざ湿布薬である。身体の柔軟性という今からでは到底改善が見込めない難題に加えて、元より致命的な方向音痴を自負する初老には、手の届かない背中へ鏡に映った反転イメージを頼りに湿布薬を貼るという難易度Maxのタスクをこなせるはずがない。案の定、粘着面同士がくっついて団子になってしまい、患部に到達する前に貴重な湿布を何枚もダンクシュートする羽目に。独身・単身者にとって何が辛いかって、背中に湿布を貼れないことがダントツ1位だろう。

 そんなアナタ、世の中にはこんな製品があるらしい。その名も「ひとりでペッタンコ」。990円。だがこの湿布を貼れない切実な思いを人は平均して年に何回くらい味わい、「ああ、やっぱこれ買っといて良かったわぁ」と溜飲を下げるのだろうか。しかも、練習なしの一発勝負で果たして本当に上手く貼れるのだろうか。仮に上手く貼れたとしても、人のぬくもりが全く感じられないプラスチック製品に心から感謝の念を抱くというのも何だかとても虚しい。そんなふうに考えると、990円が高いのか安いのかよく分からない。

2021年8月17日火曜日

嵐の後の静けさ

  日本でも各地で大雨の被害が生じているようですね。自然の脅威にさらされると、その度に人は無力だと思い知らされます。さて、こちらでは連日の猛暑の下、仕事の大嵐に見舞われました。直近の1週間は残業時間を少しでも短縮しようと無駄な抵抗に努めた結果、一日の限られた時間の中に大量の仕事を詰め込みすぎたために激しく気力体力を奪われ、さらに無謀にも前々日にはゴルフを決行。中途半端にハイな状態で突入したいざ本番の二日間では、早朝から徹夜を挟んで翌日深夜まで現場でぶっ通し。59歳のオッサンのHPは完全に使い果たし、もともとMPも体質的にないので自分にホイミをかけることもできず、帰宅後、泥のように眠るしかありませんでした。

 それでも。。。やまない雨はない、明けない夜はないんですね。今、丸一日餌のお預けをくらった猫3匹が喧嘩しながらカリカリを貪る姿を横目に、実に静かで穏やかな朝を迎えています。私の職業観は「給料分はちゃんと働こう」です。今回の仕事で、今年いっぱいはお釣りがくるくらい働いたと思いますから、しばらく気が楽です。

2021年8月6日金曜日

土の時代から風の時代にと言われても。。。

  先日、古い友人が夢に出てきたので、久しぶりにメールしてみた。この友人(女性)は、いわゆる「見える人」。曰く、私の後ろについてくれている守護霊様は主に二人いて、一人は中世の強そうな騎士。西洋のどこの国の方かは分からない。全身に真鍮の鎧を纏っているもんだから、かちゃかちゃという音が聞こえるのだそうだ。で、もう一人は、打って変わって和服のご老人。何も言わず静かに正座をして、優しい眼差しで私を見守っていると。ただ、このご老人の方は、見え方がかなり薄いので、影響力は強くはないのかもしれないという。

 この友人がくれた返信の中に、「土の時代から風の時代へと変わり」というフレーズがあったのだが、あいにく当方そのときにかなり酔っ払って良い気持ちだったので、気にとめることもなくスルーしてしまっていた。でも後になってメールを読み返し、何のことだか解らなかったのでネットで調べてみると、すぐに解った。実に便利な時代だ。

 今時?と多くの方から突っ込まれそうではあるのだが、2020年12月に、それまで約220年続いた「土」の時代が終わり、「風」の時代が始まっていた。なんということだ。もともと西洋占星術などというものは、私の興味から遠く離れているために、関連するニュースすらも目に入らなかったのだろう。ヨーロッパの騎士がついてくれているというのに、うっかりもいいところだ。

 「火」「土」「風」「水」というサイクルの中で、土の時代が象徴する元素は、物質と財産(モノと金)だそうだ。産業革命や資本主義経済がそれを示していると、そして、次なる風の時代はというと、知性、情報と自由な価値観だと言われている。情報社会の中での生き方、働き方といったライフワークバランス、ジェンダーレス。そうした時代の大きな変わり目においてシフターとしての役割を果たしているのが、コロナだと説く人もいる。

 ちょっと気に食わないのは、いろんな人たちが、この時代の変化にどう対応して生きるべきかなどという解説をしていることだ。例えば同性婚やユーチューバーに対して「ああ、もうそういうのもありな時代だよね」と違和感なく思える人は、時代の変化に既に対応する準備ができていると言い、「いいんだけど、ナンだかねぇ」と思う人は、今からでも自分らしい確かな価値観と自由な生き方を考えるべきだと言う。私は明らかに後者なのだが、正直、大きなお世話だと思う。こちとら既に60年近くも土の時代を生きてきちゃってて、人生もう終盤っていうときに価値観を変えろと言われても、そんなに器用じゃない。尤も、定年後どうしようという大きな宿題を、ずっと後回しにしてきている後ろめたさみたいなものがあって、それが自分を意固地にさせているっていう自覚もちょっとはあるので、ことは厄介だ。

 冒頭の友人に、「私が生き霊ストーカーとなってあなたの前に現れるようなことがあったら、優しく塩でも盛ってやってください」と書いた。返事は、「自分に憑いているものは見えない」というものだった。あ、そうなの。

2021年8月2日月曜日

逃げ場のない暑さ

  暑い。連日、暑いのです。さすがエジプト、さすが砂漠、さすがアフリカ。最高気温が40度以上に張り付いています。夜も気温はそれほど下がらず、30度をゆうに超える。断熱材などという建築科学を知らないエジプト人が建てた大理石と煉瓦造りの住宅建物は、それ自体が熱を吸収・保温してくれるようで、まるでナンかピッツァの釜の中にいるようだ。初老のおっさんをこんがり焼いたって美味くなるわけもない。

 そんな折、家のリビング2箇所と台所のエアコンが不調に陥った。せめてもの思いで陽射しの侵入を防ぐためにカーテンを閉め切り、扇風機を回し、それでも足りなければ団扇であおぐ。まだ暑いので冷たい7upを飲む。一瞬の気休めにしかならない。昼飯を作る台所は地獄だ。しかも唐辛子入りのアリオリペペロンチーノにしたもんだから、食べるそばから汗が噴き出す。

 夜は夜とて、地球環境問題を忘却の彼方に吹き飛ばす勢いでエアコンを回し、寝室をギンギンに冷やしてから眠るのだが、1時間後には暑苦しさと寝汗で目を覚ますもんだから、毎日眠りが浅い。かといってエアコンをかけっぱなしで寝ようもんなら、いっぺんで体調不良に陥ってしまう。

 つまり、中東の夏はまさに逃げ場のない暑さから自らの身体をどう守るかという至上命題が、常に優先順位のトップにくる生活なのです。管理人を通じてエアコンの修理技師が来てくれたのが昼過ぎ。運悪く、作業中に2度の停電に見舞われ、無駄に時間が過ぎていく。それでも、冷却媒体のガス補給、フィルターの掃除、排水管の目詰まり修理などを経て、先ほどようやく復旧した。今、リビングのデスクで快適にパソコンに向かっている。設定温度は19度。人口1億のエジプトで私一人がエコな暮らしを目指す意義を見出すことは不可能というものだ。健康第一と親に言われて育ってきたし。


2021年7月22日木曜日

今更?が好き

  目下、中東諸国は犠牲祭の連休なのです。外は連日38度を超え、夜もなかなか気温が下がらず眠りの浅い日々。一日おきくらいにゴルフはするが、身体から水分と体力を容赦なく奪う日差しの下に自分を晒し続けるほど勇敢でもない。

 そんな時は家に篭って、「ミーハーと思われたくない一心でこれまで観ることを敢えて避けてきた」映画をまとめて鑑賞するに限る。この連休のお供は、"Pirates of the Caribbean"だ。第1作から第3作までを一気に観た。なるほどディズニー映画だけあって、あっという間に現実から遠く離れた世界に引き込まれる快感が凄い。

 映画でも小説でも、話題になっているときは少し斜に構えて距離を置き、世の中がすっかり忘れてしまった「今更?」な時期が来るのを待ってから、なんの先入観なしに観たり読んだりするのが好きだ。流行りに乗っかっている後ろめたさが1ミリもない。まあ単なるアマノジャクなんだろうけど。

 観たくても見逃してしまった新エヴァンゲリオンも、これ方式で何年後かに観てみることにしよう。


2021年7月7日水曜日

七夕に思う

  堤真一、MISIA、塩野七生、研ナオコ、上田正樹、ピエール・カルダン、リンゴスター。随分と脈絡のない有名人の並びに見えるかもしれないが、年齢こそまちまちながらも実は皆んな7月7日(七夕)生まれだ。そして、かく言う私も七夕生まれ。59回目の誕生日を迎えている。

 七夕といえば、織姫(ベガ)と彦星(アルタイル)が年に一度だけ天の川で逢瀬を果たす物語が連想される。ただ、七夕の日に雨が降ると、織姫が天の川を渡ることができず彦星に逢いに行くことができなくなるため、この日に降る雨のことを「催涙雨」と呼ぶんだそうだ。催涙雨は、織姫と彦星が流す涙なんだとか。へえ、知らなかった。

 かたや古代エジプトでは神の使いとして崇められていたスカラベ(フンコロガシ)には、天の川に沿って直線的な移動ルートを取るという生物的本能があるそうだが、そんなこともあって、七夕にはどことなくロマンチックな雰囲気が盛り上がる。浴衣を着た彼女のうなじにドキッとしながら、笹に短冊を吊り下げた淡い思い出を持つ人も少なくなかろう。

 実用的には、ゾロ目の誕生日の中でも元旦に次いで人から覚えてもらい易い上位にランクインするのではないだろうか。かといって、毎年いろんな人からプレゼントが贈られてくるようなこともないのだが、それはひとえに人徳のなさかも知れない。



2021年7月6日火曜日

大谷翔平はアジア人差別をも場外に吹き飛ばしてくれるかもしれない

  毎朝のルーティーン。起き抜けに用を足し、脇に体温計を挟み、期待を胸にiPadで日本のニュースを開く。また大谷君がホームランを打っている。期待が現実として起きる頻度が高すぎて、逆に困惑する。いったいどこまで凄いことをやってくれるんだろう。そんなふうに彼を見ている日本人が、日本中だけでなく海外にもたくさんいるはずだ。

 大谷翔平、松山英樹、井上尚弥、笹生優花、大坂ナオミ。。。プロスポーツの世界ではこの数年、幾人もの日本人選手が世界の頂点に立った。鬼滅の刃、サブカル、日本食、ゲーム。。。日本の新しい文化がブームを作る。日本はもはや、自動車や家電製品をはじめとする先端産業や、日本古来の伝統風習といった従来のガイドブック的な売り文句の枠を大きく超えてきている。「最近の日本の若者はだらしがない」などと闇雲に批判していた団塊世代のジジイたちも、すっかり脱帽ではないだろうか。

 一方で、欧米諸国にはアジア人に対する根強い差別意識があり、SNSによってそれが様々な形で表面化し、政治問題にもなっている。大坂ナオミに対する礼を失したインタビュー、FCバルセロナの選手によるホテル従業員に対する悪態など、枚挙にいとまがない。尤も、アジアを十把一絡げにする知的水準の低い人たちが大勢いることも確かで、英語やフランス語を母国語としないアジア人の語学力を馬鹿にするのはとんだお門違いだ。「英語が話せないのなら母国に帰れ」となじられて悔し涙を流しているアジア人が、アメリカには大勢いる。じゃあ逆にお前らは日本語やタガログ語をカタコトでも話せるのかと言いたい。

 そんな中で、大谷翔平に対するアメリカ人の熱狂ぶりは目を見張る。ファンだけでなく、アナウンサーも解説者も、こぞってオオタニに夢中だ。そして、彼が活躍すればするほど、少なくともアメリカにおける日本人差別が薄れていくような気がしてならない。そんなことまで彼に期待してはいけないのだろうが、そんな期待すらも彼ならば現実のものにしてくれちゃうのかもしれない。

2021年7月3日土曜日

顔見知りが亡くなるのは悲しい(猫)

  毎朝、子猫3匹を連れて我が家の裏庭に餌を食べに来ていた母猫が今朝、家の前の道路で死んでいた。おそらく車に跳ねられたか、何かとびきり悪いもんでも食べたのだろうが、外傷もなく綺麗な姿で、まるで眠っているかのように横たわっていた。残酷なもんで、体の柔らかい部分から小さな蟻が集り始めていた。

 裏庭の窓の外で餌を待っていたのは子猫たちだけだったから、母猫はどこかなと子猫たちに尋ねた矢先の出来事だ。流石にこの4年くらい、毎年生まれた子供たちを連れてうちに来ていたいわば「顔見知り」なだけに、ショックだ。

 食べるものがなく痩せ細りミイラのように死んでいく野良猫は、きっとごまんといるのだろう。それに比べれば、幸せな人生だったのかもしれない。来世ではまた猫なのかな。合掌。

2021年6月25日金曜日

俺たちのアイドル・ライダーが。。。

  オートバイ・レースの最高峰、motoGPの永遠のアイドルであるヴァレンティノ・ロッシが、今シーズン限りで現役引退を仄めかしているというニュースが飛び込んできた。

 125cc時代から積み重ねてきた勝利は実に235勝を数える史上最強のライダーも、今や42歳。体力気力の衰えが即、命に直結するシビアな世界で、よくここまで第一線級にい続けることができたもんだ。天才と言って良いんだろうな、こういう人を。

 もじゃもじゃ頭で愛嬌たっぷりのお猿さん顔。デビューから一貫して、親父さんから引き継いだゼッケン46を守り続けてきた。ドクターのニックネームで呼ばれ、イタリア人だけでなく世界中のオートバイ・ファンから長年愛されてきたロッシ君、現役を退いても君のことは誰も忘れないよ。

2021年6月14日月曜日

推しメンの優勝ラウンドを観ながら飲む酒は旨いに決まってる

  宮里藍の冠が付いたサントリーレディスを、我が推しメンである青木瀬令奈クンが優勝した。28歳にしてコロナ禍の難しい時期に選手会長(プレイヤーズ委員長)を努めながらの4年ぶり2度目の優勝、しかも、全英オープンの出場切符付きという大事な大会で、目下飛ぶ鳥を落とす勢いの稲見を抑えての優勝。実にめでたい。てなことで、Youtubeで優勝ラウンド動画を観ながら飲む酒が実に旨い。今日はとっても嬉しいので、久しぶりに自らのタガを外して、平日からラム酒をダイエットコークで割って呑んでやるという暴挙に及んでいる。

 実は昨今、女子プロゴルファーの中に推しメンがいっぱいいすぎて勝手に困っている状況にあるのだが、なかなかオッサンばかりのゴルフ仲間から共感を得られない。私の推しメンの条件は、背がちっちゃくて、ちょっとポチャっとしていて、ゴルフが上手いというだけなんだが、困ったことにこの条件にかなうゴルファーが実にたくさんいるのだ。

 今日優勝した青木瀬令奈を筆頭に、西村優奈、永井花奈、吉川桃、古江彩佳、吉田優利あたりがど真ん中だ。そして、背はそれほどちっちゃくないものの、辻利恵、小祝さくらあたりがそれに続く。正直、渋野日向子とか原恵梨香とかそういう自動的に万人から人気のあるスタア選手はどうでもいい。

 青木せれにゃん(ファンの間ではそう呼ばれている)、優勝おめでとう。そして、全英オープンという大きな舞台で、身長150cmくらいしかないちっちゃい日本人選手が上位に食い込む切れ味鋭いゴルフを、世界に見せつけてやって欲しい。全力で応援します。

2021年6月7日月曜日

ビックリしたぞー(日本の女子プロゴルファーたち)

  全米女子オープン・ゴルフ。夢の舞台だ。3日目を終えてリーダーから1打差の2位につけていた笹生選手が、最終日の序盤で連続のダブルボギー。トップを走るレキシー・トンプソンは好調。う〜ん、万事休止たかぁと思って、寝たのでした。

 で、早起きしてネットを開いた途端に笹生優勝のニュース。しかも畑岡選手とのプレイオフ3ホール目でのバーディ決着。あービックリした。

 日本人の父とフィリピン人の母を持つ二重国籍の19歳。落ち着いたプレイぶりは未成年のそれではないけど、控えめで人懐っこい普通の女子なんだろうなというのが見て取れる。ラウンド後のインタビューでは流暢な英語、タガログ語、日本語の3ヶ国語で、家族の支えを強調していましたね。オリンピックはフィリピン代表として出場したいとしているそうだけど、その方が選考に残りやすいというより、日本の出場枠を日本人選手に譲ろうという気持ちなんじゃないかな。もしそうだったら泣けるな。
 ローリィ・マキロイにスイングがそっくりだとして賞賛されているのも頷けるロング・ヒッターですが、なんと言っても、オジさんも2年前から使っている三浦技研のアイアンで世界を制したのが嬉しい。
 NASAちゃんも本当に頑張った。プレイオフは水物だろう。大丈夫、実力は世界トップレベルなんだから、きっとすぐにでも次のチャンスが訪れるさ。みんな頑張れー。海外でも何千何万のおっちゃんゴルファーたちがみんなして応援しているぞー。

2021年5月27日木曜日

海外生活が嫌になっても恥じることはないよ(河本結プロ)

  女子プロゴルファーで河本結という選手をご存知だろうか。愛媛県出身の22歳。日体大を卒業しプロ転校後まもなく国内で初優勝すると、夢だった米ツアーのクオリファイを通って昨年からUSLPGAを主戦場としていた。明るくハキハキしていて、キレの良いスィングをする。髪を結ぶリボンがトレードマークの魅力的なゴルファーだ。

 米ツアー参戦から1年ちょっとというタイミングで突然の撤退理由は、「海外の生活環境になじむことが難しいと感じたから。海外での生活は自分の思い描いていた世界とは違い、想像以上にストレスを感じました」さらに「ゴルフに対して悩むというよりは、移動はもちろん、生活環境や当たり前なことが日本と違うこととか、そういう悩みに対して向き合っていた」「甘かったし、超カッコ悪いけど決めました」と吐露している。

 いわゆる「パリ症候群」(wikipedia参照)と呼ばれる精神状態ではないかと推測される。早い話、憧れや幻想を抱いて渡航したものの、いざそこで生活をしてみた結果、ままならない厳しい現実とのギャップに苛まれて鬱になる状態だ。プロとはいえ、若干22歳の若い女子。たとえコーチやチームの人たちが周囲にいたとしても、所詮は職場の同僚。孤独を感じる場面は多かったに違いない。

 翻って、このオジさんは、かれこれ30年近くに及ぶ海外駐在歴を重ねてきている。直近で日本を離れたのは12年以上前のことだ。30年の海外生活を通じて、海外に向いている人と向いていない人の双方をたくさん見てきた。その中で、一般論として海外生活を長持ちさせる方法は、ざっくりと二つあると思っている。一つは、友だちを作ること。もう一つは鈍感力。

 なあんだそんなことかと思われるかもしれない。が、突き詰めるとこの二つに絞られるというのが持論なんです。まず、友だちは、職場の外に作らないと意味がない。職場の同僚だと、酒を飲んでもスポーツを共にしても、ついつい仕事の話になってしまう。つまり、年がら年中、頭の中が仕事のことばかりになってしまう。これではストレス解消にならないんです。しかも、同じ職場ということは、同じ組織のバックアップを受けて同じレベルの生活が成立している同じ立場にいるので、一人駐在など自分と異なる環境で頑張っている人の苦労や工夫を知ることができない。住む世界も考え方も狭くなってしまうのです。

 鈍感力というのは、生活様式、言語、文化、社会経済インフラ、サービスなどありとあらゆる要素がこちらの期待通りには全くいかないことを、いかに鈍感にやり過ごしてストレスを蓄積しないかという、自分自身の心の操縦方法のことを指します。「現地の生活のし易さは最初から期待しない。物事がうまく進まないのが当たり前」というふうに腹を括ったスタンスが取れれば、随分と気持ちは楽になるものです。

 でも河本結ちゃん、心に無理を重ねて自分を壊してしまう前に、勇気ある撤退を決意したのは立派ですよ。決してカッコ悪いとか、恥ずかしいとか思わないでください。日本が便利すぎるのです。世界の中で日本が突出して良いところすぎるのですよ。22歳の今のあなたは、とても感受性の高い純粋な人なんでしょう。そして、持てる力は全てゴルフにだけ向けたかったのでしょう。そんな真っ直ぐなあなたには海外生活は厳しいチャレンジだったかもしれないけど、もう少し大人になって、いろいろと良い意味でズル賢くなってからもう一度チャレンジすることだって十分できるのだから、何も恥じることはありません。あなたは十分にカッコ良い。応援しています。

2021年5月23日日曜日

大きくなれよ

  まあ、結局こういうことになるのです。チビ猫たちの顔を見ていたら、仕事の帰りがけに餌のカリカリ(ただし子猫用)を買ってきて、毎朝庭のトレイに入れてやることなんざ、何の面倒でもないわけです。母猫に見守られながら無心で餌を食べるチビ猫3匹。ちっこいうちは世話してあげるから、その間にせいぜい大きくなれよ。


2021年5月21日金曜日

どうか天国で安らかに

  職場の同僚であるエジプト人スタッフの一人が今朝、コロナで夭逝した。ICUでの懸命の治療も虚しく。享年53歳。まだ小中学生の3人の子供を抱える良きパパだった。

 ムスリムである彼は、今晩、審判にかけられる。礼拝などの善行を積んだ数と、教えに反く悪行を犯した数を天秤にかけられるのだ。ムスリムは死後、審判にかけられるその時まで自身が天国に行けるか地獄に落とされるか知る術を持たない。唯一、ストレートに天国に行くことができる切符は、ジハード(聖戦)のみとされる。だからテロが後を絶たない。

 亡くなった彼は、無口で実直な、職人気質の男だった。まだ小中学生の3人の子供を抱える働き盛りだ。持病を抱える子供を育て上げるために、一生懸命働いてくれた。良い親父なんだろう。さぞ無念だったろうに。でも、100kgをゆうに超える巨漢でもあったので、きっと成人病の一つや二つは持っていたんだろう。どうか天国で安らかに、家族を見守って欲しい。合掌。



2021年5月16日日曜日

うちの子をよろしくと言われても。。。

  去年、一昨年と、家の庭に生まれたばかりの子猫を連れてやってきた母猫が、3年連続となる今年もまた、3匹の赤ちゃん猫を連れて現れた。白っぽいのと、薄茶と、その混ざったの。母猫には警戒感は微塵も感じられず、むしろ「先週生まれたうちの子です。かわいいでしょ。エサをあげたいならどうぞ」とでも言っているような表情で。

 そして、昨日は自分ちみたいに庭でくつろいで昼寝。かと思えば今朝は子猫を残して母猫はどこかへ行ってしまい、姿が見えない。どこか別の家で餌にありついているのか。おいおい、子猫を放棄するようなことは本能的にないとは思うけど、「うちの子をよろしく」って言われても困るんだよね。かといって見殺しにもできず、仕事の帰りにエサ買いに行くのかなぁ。面倒くさいなぁ、もう。



2021年5月12日水曜日

ラマダン終了とて手放しで喜んでもいられず

 明日から、ラマダン終了の大祭であるイード(Eid al-Fitr)の連休に入ります。厳密には、イスラムの権威筋が今夜の月の満ち欠けの塩梅を見て、明日の日中も断食を続けるべきか、明日朝から飲み食いしても良いかを決めるんだそうです。

 そして、断食明けを待ち侘びたムスリムたちがお祭り気分で一斉に昼間の街に繰り出すのですから、コロナの感染爆発が起こるんではないかという不安が頭をもたげます。実際、今日の夕方には既に帰宅を急ぐ多くの人々が渋滞を起こしていたし、道ゆく人々の多くがマスクを着用していませんでした。

 ちょっと前までは、せっかくの連休なので、こないだ商船が座礁したスエズ運河でも見に行くかと考えていたのですけど、無警戒なエジプト人たちを見ていると、何やらこのタイミングが感染の重要な分岐点、つまり至る所で感染リスクが相当高まる数日間になるのではないかと思い直し、大人しくしていることに決めました。

 公式発表によればエジプトの新規感染者数は一日あたり1,000人強というペースがしばらく続いています。ただし、あまりにも検査数が少ないため、実際の感染者はこの5倍以上にのぼるであろうと、まことしやかに伝えられています。何だかよくわからない中国産やロシア産のワクチンなど焦って接種したくないし、今は行動を自重するしかないんでしょうね。


2021年5月4日火曜日

何度目のジャカランダか

  中東の断食月ラマダンも残り半分を切った。コプト教のイースターと共に5連休が終わって今日からお仕事再開。

 5連休の間に、中一日の休息を挟んでゴルフを4ラウンド。日中は40度に迫る暑さだが、仲間達もみんな日に焼けて、心地よい疲労が残る。昨日の18番ホール後、テラス席のテーブルを囲んでビールで乾杯。我々日本人にはラマダンは関係ないので、昼間っから飲み食いすることに申し訳ない気持ちはちょびっとしかない。うん、ちょびっとは申し訳ないと思っているんです。

 そして、目をやればジャカランダの木が鮮やかな薄紫色の花を誇らしげに咲かせていた。1週間くらいですべての花びらを落としてしまうこの花の美しさ儚さは、日本人にとって桜を連想させる。もうそんな季節なんだなあ、エジプトに来て何度目のジャカランダだろう。5度目かな。すっかり長居してしまっているなぁ。

 今晩は、関係先のエジプト人とイフタール(断食明けの食事)を共にする。相手は高齢の好々爺だが、ムスリムのくせに酒を嗜む。まあ酒飲むムスリムも結構いるんです。なので、貴重な日本のウィスキーを持ち込んで、飲ませてあげることにしよう。「知多」という銘柄のウィスキーがたまに手に入る。甘口で、旨い。

2021年5月2日日曜日

暇だからメーデーについて聞きかじる

  5月1日、メーデーである。週末にかかっているとは言え、振替休日もない。労働者の日だから仕事は休むし、そうでなくてもラマダン中の運転手を働かせるのもちょっと気が引けるので今日はお家にこもっていた。日本も連休に入ったので、メールなども全く入ってこないから、極めて静かな一日だ。

 ときに、緊急事態を電話や無線通信で知らせるときに冒頭で「メーデー」と唱えることは、映画などでなんとなく見知っていたが、なんでメーデーなのかはずっと謎のまま放置してきた。ので、調べてみた。簡単だった。フランス語で「メデ(m'aider)=助けて」がそれだ。それを、英語圏の人間がMay dayのように発音しているだけだった。ちなみに、緊急事態を告げる際は、メーデーを3回唱えることと決まっているようだ。聞き間違え等が起こらないよう、そうプロトコルで定められているそうだが、知らなかった。

 あれ?それはいいんだが、それじゃあS.O.Sとメーデー何が違うのだろう。そもそもSOSって何の略だ?という疑問にあたる。だから調べてみた。簡単だった。船舶において救助を求める際のモールス信号として国際会議で世界的に統一が図られた符号がSOSなのだ。全く知識がないわけだが、記号表記では「・・・ーーー・・・」となるんだそうな。それはいいんだが、いったい何の略なのかという疑問が残る。しかし、これまた信号の受けてが間違わないようにと定められた符号なので、実は意味はないみたい。ちなみに日本では「危急」という訳され方がされていたようだ。ピンクレディが乙女のピンチを歌ったのは随分と昔の話だが、SOSというモールス信号自体が既に廃止されていたというのも知らなかった。おうち時間で暇な時こそ、今までスルーしてきたトリビア的な小さな謎を解く良いチャンスだなと思いました。ちゃんちゃん。

2021年4月23日金曜日

作るの?作らないの?

「接着剤も塗料も全くない状況でも作れるプラモって言ったら、ガンプラしかないでしょ。」

 日本の友人からそんな助言をいただきましたが、そんなこたぁ分かってるんです。しかも、当たり前ですけどエジプトにガンプラなんか売ってないんです。

 でもなぁ、とか思って、本棚の上で埃をかぶっている僅かばかりの積みプラを改めて見てみると、こんなものがありました。

 BMWのZ1という車は、1987年のフランクフルト・モーターショーで発表され、その後、約3年くらいの間に僅か8000台だけ生産された幻みたいな車です。2ドアのいわゆるロードスターで、ボンネット下には2500cc直6エンジンを積んでいます。なんと言っても特徴的なのは、開かないドア。開く代わりに下がってボディの中に収納されるという特殊な構造が話題を呼んだようです。
 キットはレベル製。そうでなくても洋モノは合いが酷く悪かったり、バリやヒケだらけだったりと、難易度が相当に高い訳で、だから今まで手をつけられずに生き残っていたのです。部品点数はそれほど多くないようですが、パーツの成形色は薄いグレーと濃いグレー、それにメッキパーツと透明パーツだけ。箱絵の実車は8000台のうち133台しか生産されなかったという薄い黄色、内装はタンの皮張りを思わせます。
 これを、塗装なしで組むことにどれだけの意味があるというのか。いや、そういうことではなくて、少しでも楽しむことができるのなら、作ること自体に大いに価値を見出せるのではないか。矛盾する思いが心の中で交錯します。さて、私はこれを作るのでしょうか。




2021年4月16日金曜日

プラモ再開。。。に大きな壁(涙)

  コロナ禍でいわゆる「おうち時間」が増えているのがその理由なのかもしれないが、プラモデル作りが再び流行っているような気がする。ハセガワやフジミといった国産の老舗メーカーも元気に新製品を発売しているし、エヴァンゲリオンの影響もあってガンプラの人々も気を吐いているように見える。

 Youtube上には、数多のモデラーたちが素晴らしい製作過程を披露している。それらを目にする度に、もうこの種の発信は動画でなければ訴求力が全くなくなってしまったことを、嫌でも確信するわけです。きっと、動画を上げること自体は、技術的にはそれほど難しいことではないのだろう。しかし、機材、セッティング、通信環境、セキュリティ対策など、クリアすべきハードルがあまりに多く、エジプトにいる間にそれらをある程度のレベルで満足させることはおそらく叶わないだろう。そういう意味では、すっかり時代遅れのモデラーを自覚しなければならない。

 とはいえ、純粋にプラモを作りたい熱は約4年のブランクを置いてなお一向に冷めることはない。どころか、世のモデラーたちの奮闘ぶりを見るにつけ、再び老眼に鞭打ってやってみたいという気持ちを抑えることが難しくなってきた。

 何も予定がない金曜日、棚の奥の方に仕舞い込まれていた段ボール箱を開けてみた。宝箱かタイムカプセルを開けるような気分だ。果たして、工作マット、ナイフ、ヤスリ、ピンバイス、ピンセット、サンドペーパー、マスキングテープ、クリップ、筆などの工具類はほとんど揃っている。そして、プラ板、プラ棒、洋白線、各種ケーブル、ネジ、デカールなどの素材もひと通りある。

 なんだこれならすぐにでも再開できるんじゃないかと小躍りして喜んだのも束の間、接着剤と塗料が一切ない。セメントタイプも流し込みタイプも、それにあれだけ買い集めたアクリル塗料もエナメル塗料も、どれひとつ見当たらない。

 しばしフリーズした後に、思い出してしまいました。ローマから転勤してきた際、引っ越し荷物に強い可燃性のものを入れることはできないと業者から言われて、泣く泣く全部処分してきたのだった。接着剤と塗料がなければ、プラモデルは作れません。いや、塗料はなくても組むことだけならギリギリできるのかもしれないが、そんなレベルで満足できるはずがない。

 すがる思いで机の引き出しを開けると、百均の使い切り瞬間接着剤ミニというのが2つ残っていた。これで戦えるのか。戦えと言うのだろうか(誰が?)。


2021年4月14日水曜日

ラマダン中でも頑張れサラー

  中東の世界では昨日からラマダンに入った。ムスリムの人々は、陽が上がっている間は一切の飲み食いや喫煙をせず、預言者ムハンマドが辿った砂漠での苦行を追体験する。そして日の入りと共にお祈りを捧げ、ようやく水と食事にありつけるということだ。これが約1ヶ月続く。

 さて、エジプト人にとっての国民的ヒーローといえば、イングランド一部リーグ、リバプールで大活躍中のモハメド・サラーだ。ASローマから移籍後、超一流のストライカーぶりをいかんなく発揮し、今シーズンもリーグ得点王をひた走っている。そして、今夜はCLの舞台でレアル・マドリッドとの大一番を控えている。最近、もじゃもじゃのアフロを短く刈り込んで、ようやく大人っぽくなったね。でもオジさんは以前の方が好きかな。

 敬虔なムスリムであるサラーは、もちろん教えに従い断食を行っていることだろう。だが幸いなことに、ホームで行われる今日のマッチは夜だ。英国の今日の日の入り時刻は19:57。21時のキックオフまで1時間あるので、おそらく練習の直前に何がしかの水分と少量の食べ物を口にすることはできるだろう。

 頑張れサラー。そして、同じASローマから移籍して再びチームメイトになったGKのアリソンも頑張れ〜。



2021年4月12日月曜日

日本人であることの誇り(マスターズ)

  松山英樹選手に世界中から寄せられる祝福の影で、この偉大なプレイヤーのバッグを担いだ早藤キャディの行動が外国メディアから注目されている。

 18番グリーンで優勝のかかったパッティングを松山選手が沈めた後、フラッグを戻してグリーンを後にする前に、帽子を脱ぎコースに深々と一礼する早藤キャディの姿がありました。この行動に、感嘆と感動の声が次々と上がっているんです。
 礼に始まり礼に終わる日本人の精神が、武道やゴルフだけでなく他の様々なスポーツでも尊重されているのは、日本人ならみんな知っています。神聖な競技の場に対して、また、大会の運営関係者、コースを素晴らしいコンディションに維持してくれているグリーンキーパーや、応援してくれたギャラリーに対して、礼を失してはならないという思いがあるのでしょう。私たちアマチュア・ゴルファーも大いに見習いたい。
 10年前、20年前までは、対等なビジネスのシーンですら頭を下げお辞儀する日本人の挨拶は、揶揄され、なんなら嘲笑を買うことすらありました。職場の先輩からはその昔、「外国人と挨拶する時にお辞儀するな」と教わりました。
 でも、今は違います。目に見える相手にも、目に見えないものに対しても、敬意を表すことができる日本人であることに、誇りを覚えます。

俺たちのヒデキがやってくれた(マスターズ)

  松山英樹選手、日本人初のマスターズ優勝おめでとう。

 生中継なんて望むべくもないエジプトで、ユーチューバーのLIVE中継を観ながら、そして最後の18番ホールは日本の友人にLINEで日本のテレビ画面を映してもらって、かろうじて優勝の瞬間をリアルタイムで祝うことができました。

 フィニッシング・ホールのセカンドショットを打ち終えてグリーンに向かう松山を、大歓声のスタンディング・オベーションで迎えてくれた米国人パトロン(ギャラリー)たちの姿を見て、ぐっと胸に来るものがありました。彼はアメリカでも人気があるんです。

 海外で頑張る日本人が活躍し、現地の人たちから賞賛を受ける。職業は違うけど、どこか共通するものを勝手に感じていて、それが何より嬉しい。日本ならばあらゆるメディアが大騒ぎで報道するんだろうけど、こちらはこちらでそういうのが何もない代わりに、静かに、でもじんわりと喜びを味わうことができます。ただ今エジプトは深夜1時過ぎ。独りでウィスキー飲んで泣いてます。ヒデキ、おめでとう!



2021年4月6日火曜日

嬉しい人は大喜びだろう(ホンダDAX125)

  四月に入ったからといって、ウキウキするようなニュースが聞こえてくることもない。これ以上コロナ禍が続くと、本当に気が病んでしまいそうだと心配になるのは、オジさん世代ばかりではないだろう。

 そんな中、モンキー・ゴリラなどと同じカブ系のエンジンを積んだ往年の名車、少年たち御用達の原付だったホンダDAXが、125ccになってカムバックするらしい。雑誌のスクープ記事では、来年春ころに発売とある。

 ダックスという名前から連想されるとおり、モンキーに比べると少し胴長だ。つまりホイールベースがちょっと長いので、太いタイヤと相まって、直進安定性の向上に一役買っている。まあ早い話、ゆったりした姿勢で長時間でも乗っていられるというわけだ。ただ、なぜかマフラーはスクランブラーみたいなアップ・タイプが選択されているのは謎だ。

 それにしても、このところ125ccのいわゆる原付二種が元気だ。もちろん排ガス規制のためであろうが、原付二種の免許が緩和されるのではないかという期待も膨らむ。そうなれば、車の免許しか持っていない往年の少年たち=今のオッサンたちが、ここぞとばかりに125c化したモンキーやダックスを買うだろう。メーカーもそれを見越しているのではないか、何なら当局と水面下で手を握っているのではないかと、つい穿った見方までしてしまう。まあ、たいへん喜ばしいことなので、仮にそうであっても結構だ。モンキーとダックスでつるんでツーリングなんて、想像しただけでも楽しそうではないか。



2021年3月24日水曜日

濃厚接触疑い、からのPCR検査、からの…

  先週金曜日にとある食事会で同席した仲間の一人がコロナに感染し、接触から約2日後に発症したもんだから、ギリギリ48時間以内で濃厚接触疑いという窮地に立たされました。当然のことながら出勤は控えて自宅に自主隔離、接触から4日後の昨日、PCR検査を受け、翌日のつい今しがた、陰性結果が送られてきました。

 テラス席だったとはいえ、お酒も入って声も大きくなっていたので、今度ばかりは流石にヤバいかもと気を病むあまり、何だか熱っぽく感じ始めて一日に何度も体温を測ったりと、ソワソワというかザワザワした数日間を過ごしました。

 カイロでPCR検査を請け負う医療機関は結構ありますが、今回は出張検査を頼みました。約束の時間をちょっと過ぎたくらいに、ウーバーイーツみたいなバイクに乗った私服のお兄ちゃんが一人で来て、綿棒で検体を採取。あっという間に帰って行きました。こちらは、防護服を来た医師や看護婦を想像していただけに、かなり拍子抜け。料金は?と訊くと「俺に払うな」と言い、結果は?と尋ねると、「24時間以内にワッツアップで送る」と。で、ちゃんと送られてきました。これで出張費込みで約12,000円。安いもんです。

 エジプトでは一日の新規感染者が600人台でずっと横這い。まだまだ気を抜いてはいけないんですね。可愛い濃厚接触の写真でも見て、癒されましょう。



2021年3月12日金曜日

異国から思いを寄せる(東日本大震災10年)

  10年前の今日、私と家族はパリに暮らしていました。早朝からテレビに流れるNHKのニュースは、信じがたい映像を何度も何度も繰り返し映し続けていて、それをただ食い入るように見ては、祖国日本がどうにかなってしまうのではないかという不安と恐怖に震えました。

 当時、長男は中学3年、次男は小学4年生でした。それが今や25歳の社会人と、19歳の大学生。おかげさまで二人ともすこぶる元気です。翻って、震災で、或いは津波でお子さんを亡くされた親御さんがどれだけいたことでしょう。運命とはいえ、ご遺族は、この10年の間にすっかり大きく成長したはずの我が子たちを見ることが叶いません。あまりに残酷です。同じ境遇にない限り到底共感できないほどの深い、激しい悲しみに違いありません。その運命が自分に降りかかっていたとしたら、その後の人生を生きていけたか、全く自信がありません。

 地下鉄サリン、阪神淡路大震災、熊本地震、アメリカの9.11も、大きな災害や事件があったのは、いつも外国に暮らしている時でした。現場にいたどころか、遠く離れた異国にいたわけです。それでも、尊い命を奪われた方々に向ける哀悼の気持ちは、日本に住んでいる方々と少しも変わりありません。事務所では半旗が掲げられました。黙祷を捧げ、被災を免れた私たちに出来ることは何なのか、それを強く思い、考え、そして懸命に一日を生きていこうとする気持ちもまた一緒です。合掌。

2021年3月5日金曜日

英語のお勉強はYouTubeで気楽に

  テレワークの日、会社のシステムにログインできるわけでもないため、家でできる仕事は実際そう多くない。パソコンの前に一日じゅう張り付いている中、余った時間に何をするかというと、英語のお勉強という言い訳の下にいろんな動画を見るわけです。

 数あるYouTubeチャンネルの中から今日お勧めしたいのは、裁判ショーものだ。日本では馴染みのないジャンルだが、これが実に良い。

 一つ目は、Judge Judy。20年以上続いているアメリカのTV番組で、5千ドル以下の少額民事訴訟のみを扱う裁判の公判の様子をショー化したものだ。歯切れの良さは超一流。だが、こんな人を嫁にはもらいたくないかも。

 対するこちらは、英国のJudge Rinder。四十代半ばと思しきまだ若い裁判官が、同様に少額の民事訴訟を裁くショーである。廷吏(アシスタント)を務めるミシェルという名の美しい女性も、人気に一役買っている。

 米英で大人気のこの二人の裁判官に共通するのは、頭の回転の速さ、洗練された言葉の選択、正義を尊び悪を断罪する毅然とした態度、そしてユーモア溢れる人柄であろう。特に、英語のお勉強という視点から見るとき、アメリカ英語とクイーンズ英語の発音の違いが明確に分かるだけでなく、それぞれの言語において誰もがお手本とすべき語り口であることは異論を挟む余地がない。この二人のように喋ることができれば、英語はもう学ぶことはない。

 最近は、上の二人以外にも、Caught in Providenceというチャンネル名のJudge Caprioがお気に入りに加わった。イタリア系移民の家系に育ったこの判事が裁くのは、ロードアイランド州の首都プロヴィデンスにある交通違反専門の簡易裁判。主に信号無視や駐車違反で反則切符を切られ裁判所に召喚された人々から、当日のやんごとなき事情を聞き、温情深く罰金を軽減または免除してくれる、まさに人情の裁判官なのだ。

 裁判モノ、しかも英語のお勉強と聞くと、なんだか正座して観なければいけないような気になるが、決してそんなことはない。紅茶でも飲みながら、魅力的な裁判官だけでなく、登場する原告も被告もみんなキャラが立っていて、彼らが織りなす人間模様を、バラエティ番組でも見る気分で気軽に楽しめばよい。それでいて、次第に耳が英語に慣れてくる。次の日に自分の口から出てくる単語が、ほんの少しずつソフィスティケイトされていく(ような気になる)。とにかくお得なのです。

2021年2月24日水曜日

名車の予感(GB350)

  ホンダから新しいバイクが発売される。それ自体は珍しいことではないけど、これはちょっと、いや相当に心が踊るニュースだ。

 GB350。空冷単気筒350cc。ホンダのウェブサイトでお披露目されたその姿は、”ベーシック・ロードスター”と銘打ったとおり、どこから見ても「バイクってさ、昔っからこんな感じだったよね」「んで、好きにイジっちゃってよ」とでも言わんばかりだ。もちろん、カフェ・レーサーに仕立てる人が多いだろうことを瞬時に想像させるし、味付けによってはダート・トラッカーも似合いそう。つまり、自分好みのカスタムのベース車両として、これ以上ない素材と言えそうだ。唯一、惜しむらくは、ホイールがワイヤースポークじゃないことくらいか。

 つい先日のエントリで、ヤマハSR400の引退を引き合いに出したばかりだ。そして、それによって市場にポッカリと開く穴を直ちに埋めるが如きタイミングで、GB350の登場が発表された。出来過ぎじゃないかと、穿った見方すらしてしまう。

 老若男女を問わず、一つずつ好みのバイクに仕上げて、休日には心地よいシングルの鼓動を聴きながら、良い景色や良い出会いを求めて、ゆっくりのんびり走ろうよ。そんな楽しみ方を、きっとこのバイクは提案してくれるのではないだろうか。名車の予感がするのです。

2021年2月19日金曜日

オジさんの朝食

  生きていく上で食事というのは避けて通れないものだということを改めて実感する初老のオジさんなのだが、このコロナ禍で毎日の食事、特に朝食の態様が変化した。

 平日は、朝食をとらない。出勤日はせいぜいがオレンジジュースとヨーグルトくらい。で、お昼はバランスよくきちんと食べて、晩飯を極く軽目にする。スープが多いかな。そして、テレワーク日は朝食を抜いて早めの昼(カッコよく言えばブランチか)に麺類をがっつり自炊する。その後は寝るまでほぼほぼ食べない。いずれにせよ炭水化物を極力少なくするダイエットは継続中だ。一日に2回炭水化物を主食として食べた翌日は、ほっぺたがプニプニしているのがわかる。

 そして週末。よっぽど天気が悪くない限り二日間ともゴルフをするので、朝からちゃんと食べる。そうでないと18ホールもたないから。まずは卵を一品。目玉焼きでもスクランブルでも良いのだが、今日は写真を撮るので普段よりちょっとカッコつけて目玉焼きに塩コショウとしてみた。サルモネラ菌が心配なので、フライパンをしっかり熱してターンオーバーする。パンは丸いバゲットか、前日に買っておいたクロワッサン。それにヨーグルトとバナナ。飲み物はオレンジジュースまたは紅茶だ。紅茶はティバッグだが、結構飲む。朝晩2回は飲むので、英国人なみかも。

 なるべく野菜を多く摂り、炭水化物を制限し、間食しない。適度な運動をする。晩酌はしないが、ゴルフの後だけ飲む。言ってみれば健康法はこれだけなのだが、効果はてきめん。人間ドックの各種数値も悪くない。病院にお世話になるどころか、薬の一粒も飲んでない。実に有難い。



2021年2月10日水曜日

残して良いモノ、残さなきゃいけないモノ(ヤマハSR)

  日本が世界に誇る生粋のカフェ・レーサー、ヤマハSR400が国内向け生産終了となります。1978年に誕生してから44年の間に、累計11万台以上が生み出されたそうだ。そして、3月15日に発売される最終モデルに、エラい勢いで予約が入っているのだとか。

 空冷単気筒400cc、スリムなタンクには音叉マーク、低いコンチネンタル・ハンドル、スポークホイールに象徴されるいかにもバイクらしいそのスタイルは、当初からほぼ変わっていない。Final Editionが60万5千円、Final Edition Limitedが74万8千円(いずれも税込)というプライスタグは決して軽くはないけれど、新車でSRを買うことができる最後のチャンスを逃すまいとするファンが多いのも頷ける。

 オジさんがSR400を初めて意識したのは17歳くらいのこと。たぶん初期型だったのかな。いわゆる走り屋ブームに火がつき始めたあの当時、よくバイク仲間と一緒に原付を駆って筑波山に走りに行ったもんだ。ワインディングの途中、うっすらと朝靄が残るまだ誰もいないパーキングに、独りSRと佇む二十代後半とおぼしきお兄さんがいた。黒のレザー・ジャケットと、ジッポーで火をつけたタバコがよく似合っていた。少年の私たちが少し遠巻きに、指を咥えるように眺めていると、お兄さんが「エンジンかけてみなよ」と言った。デコンプなんてものを知らない私たち、先にトライした友人は、キックを踏み下ろすことすらできず、強烈なケッチンに足を跳ね返されてすぐに諦めた。次は私の番、キックペダルをコツコツとやって圧縮を確かめ、全体重をかけて一気に踏み込むと、パンパンッと威勢の良い破裂音がキャブトン・マフラーから弾き出された。「ほお、上手いな」と褒めてくれたお兄さんの言葉がすごく嬉しかった。お兄さんはタバコを吸い終えると、小さなピースサインを残してワインディングに消えてしまった。バイクの姿は見えないのに、SRの排気音だけがいつまでも山肌にこだましていた。

 11万台のSRが、いったい何人のバイク好きを魅了してきたのだろうか。排ガス規制の強化と共にこの世から姿を消すことになってしまったこの素晴らしいバイク、そして頑なにそのスタイルを守りながら作り続けてきたヤマハというメーカーの努力。こういうものを、日本が残さないで誰が残せるのかと、本当に残念に思います。



2021年1月25日月曜日

食欲は厄介だが美味しいもんが食べたい

  エジプト単身生活でいちばんのストレスは食生活だと感じます。一日3食どころか、昼1食だけの日もままある訳ですが、それもこれも生きている限り、生きていくためには、人は「食欲」という厄介なシロモノから解放されることはないからなんですね。食欲さえなければ、食べなくたって生きていけるのであれば、これほど便利なことはないのですから。

 ただ、そうは言っても、どうせ食べるのであれば美味しいものを食べたい。たくさん食べるわけではないから、量はちょっとだけでも良いので、美味しいものを口にしたい。そんなささやかな要求が、エジプトで満たされることはまずありません。スーパーで売っている食材は何年経っても目新しい商品が入荷することはありません。駐在員たちのオアシスとなっている日本レストランがかろうじて1店あるんですけど、ここへきて日本酒と焼酎の提供が止まってしまいました。ホントに何とかしてほしいです。

 比べるのが間違っているとはいえ、年に1回くらいの一時帰国で日本のスーパーに所狭しと並ぶ食品を見るたびに、涙が出そうになります。惣菜売り場なんか目の毒すぎて、近寄ることができません。レトルトなんて全部買って帰りたくなります。安売りの値札がついた大福とか、悶絶します。

 そんなことをぐだぐだ語っていても一向に埒が開かないので、美味しいもんを食べたかったら自分で作るしかないわけです。テレワーク日の昨日は、具沢山のビーフカレーを多めに作りました。二日目の今日は、もっと美味しくなっていることでしょう。写真を家族に送って、いいねってコメントしてもらうわけです。最後に残った分は、麺つゆを加えてカレー南蛮にするんです。ささやかな食欲を満たし、ささやかな幸せを感じるために。



2021年1月16日土曜日

今年の初ラウンドは暖かくて快適

  今年初のゴルフに行ってきました。カイロの日中の気温は20℃、空は快晴。寒い東京で終始縮こまっていた身体がほぐれていくのを実感しながらのラウンドは実に気持ちが良く、眼下に広がる緑色はテレワークで疲れた老眼を癒してくれます。

 今回の一時帰国中に日本で購入したゴルフ・グッズは、シューズ1足、グローブ2枚といった消耗品の他は、レーザー距離計のケースだけ。特に、距離計のケースは2年間の酷使によってズタボロになっていたので、是非とも購入したかった。

 新宿の小田急ハルクにゴルフ・フロアーがあることを知り、いそいそと出かけましたよ。有名ブランドの商品が所狭しと立ち並ぶ中で、オジさん世代のキラー・コンテンツとも言えるパーリー・ゲイツを差し置いて選ばれたのが、ニューバランスのケース。機械を収めている無骨な感じがなくて、かなりキュートなデザインが二重丸。サイズが合うかどうかを心配する初老のオジさんにかけてくれた「たいていの距離計は収まりますよ」という売り子のおネエさんの言葉を信じて購入。果たして、その言葉どおりにピッタンコでした。

 初ラウンドのスコアはともかくも、真新しい距離計ケースを腰のベルトに通しただけで、ちょっとだけゴルフのレベルが上がったように錯覚してしまいそうな、またそんなふうに楽しくラウンドできること自体が、この息苦しいコロナ禍では有り難く感じます。



2021年1月13日水曜日

静けさや。。。

  楽しくて何でも美味しかった一時帰国からカイロに戻ってきて今日で5日目。未だ体内時計が7時間の時差をアジャストしきれるはずもなく、朝4時くらいには必ず目が覚めてしまいます。

 昨日職場に出勤してみたら、案の定、仕事は山ほど溜まっているというのに、マネジメントの方から「せめて今週いっぱいは自宅で自主隔離をお願いします」と言われ、ほうほうの体で帰宅してきました。いやいや、いちばん最近PCR検査を受けて陰性が証明されているし、今や陰性証明をもった人しか飛行機に乗ってないんだから、なんなら職場で私がもっとも安全ということにはならないのかな。日本でもやっている水際対策も、陰性者に対して2週間の自主隔離、公共交通機関の利用すら禁止となっているけど、これって誰が決めたんだろう。ホントに意味がわからない。

 というわけで、日がな一日ほぼパソコンの前から離れない生活(これをテレワークというらしい)が再開されたのだが、何だろう、家の中が不気味なくらいにシーンと静まりかえっている。時おり聞こえるのは、冷蔵庫がウーンと低く唸る機械音と、上の階の住人の無神経な足音くらい。静けさや…と詠んだ芭蕉には、それでも蝉が声を聞かせてくれていたのだが、こちらは鳴きもしない蟻んこくらいしかいない。その蟻もほぼ退治してしまった。

 日本を発つ前日、PCR検査を受けるため八重洲口のクリニックに行った際、検査結果と証明書の発行を待つ間、東京駅から皇居あたりをぐるっと散歩した、あの時の静けさも格別だった。走っている車の音の他は、何も聞こえなかった。東京の、いや日本のど真ん中に立っていて、この静けさは何なんだろうと、随分と違和感を覚えたものだ。

 それにしても最近のスマホはホントに綺麗な写真が撮れるので感心しきりだ。撮った後も、スマホ内で相当程度の画像加工が施せる。これじゃあカメラが売れなくなるのも無理もない。


2021年1月10日日曜日

ナイル川の水を飲んだ者は。。。

 「ナイル川の水を飲んだ者は、またエジプトに帰ってくる」という古い言い伝えのとおり、1ヶ月の一時帰国からカイロに戻ってきました。

 非常事態宣言が発動された8日の夜に都内の自宅を出発してから30時間。実に長く、年寄りには辛い旅です。自宅から最寄り駅まで徒歩10分、最寄り駅から新宿まで約25分、新宿のバスターミナルから羽田空港まで約35分、チェックインから出発まで約3時間半、羽田からフランクフルトまで約12時間、フランクフルト空港内で乗り継ぎ便まで8時間の待合い、フランクフルトからカイロまで約4時間、カイロ空港の入国手続き等で約1時間、カイロ空港から自宅まで約30分。もうヘトヘトです。その上、羽田もフランクも、空港内の店、特にレストランは完全に全滅。この30時間、サンドイッチのようなものしか食べてません。食欲もありません。

 そして、帰ってきたカイロの家の中は、床に数百匹と思しき蟻の死骸があったほかは、無事でした。まあ、この状態を無事と言えるのか大いに疑問ではありますけど、疲れているのでそこは深く考えることをせず、全部死んでるんだから良いやと、見て見ぬふりをして明日の朝にやってくるメイドに任せることにします。

 エジプトは1日あたりの新規感染者が1000名を少し超えるくらいと、日本よりは随分ましな状況。もっとも、公表されている数字を信じるのならばという前提です。それにしても家の中が静かです。家族と過ごしていた時と比べると、静かすぎて奇妙です。

2021年1月4日月曜日

草津良いとこ一度は・・・

 正月二日、三日と1泊で草津温泉に行ってきたぞ。年に一度くらいしか日本に帰ってこない生活の中、一時帰国中の温泉旅行はこのコロナ禍でちょっと無理してでも定番化したい。ただ、お宿の関係者にご迷惑をおかけしたくないので、抗原検査キットを購入して家族みんなで自主検査・陰性確認した上で、特急に乗った。

 長いトンネルを抜け、山を越えた先の草津は、雪景色でした。そして、寒い。エジプト暮らしで毛穴が開き切っていたためか、余計に寒さが堪える。湯畑も西の河原もうっすらと雪化粧をして綺麗なことこの上ないのだが、とにかく寒い。小道の脇に流れる温泉に指先を浸すと、その時だけは天国なのだが、その後がヤバい。

 ひいひい言いながら宿に戻って露天風呂、そして夕食にお節を食べながら地酒をちびる。内陸なのに、お魚が旨い。仕入れが良いのだろう。

 源頼朝の時代からこんこんと湧き出る強い酸性のお湯のおかげで、細菌はほとんど滅せられてしまうそうだ。「五寸釘を入れといたら1週間で針くらいの細さに溶けますよ」とは、タクシーの運ちゃんの科白だが、まあそこまでではないだろうよ。でも、だからここ草津にはコロナはない。Go toを停止する必要なんかないんじゃないか。







2021年1月1日金曜日

謹賀新年

   あけましておめでとうございます。

 元気に元旦を迎えられていることに感謝しつつ、一日も早く健やかで平和な世の中が戻ってくることを願って、今日は近所の小さなお稲荷さんをお参りしようと思います。