2021年12月29日水曜日

エジプトを離れるカウントダウンは少し複雑な心境

  中東の国にいてクリスマスもなかろうと思われるだろうが、ここエジプトの人口の1割はコプト教という古代キリスト教の教徒なので、ホテルやレストランに行くとそれなりにクリスマスの飾り付けがなされている。まあ、とはいえ還暦手前の単身赴任のおっさんにとって、もとよりクリスマスは全く関係がないイベントだから、極めて静かに、淡々と荷造りしながらイブをやり過ごしましたとさ。

 そして有馬記念は当然に的中することもなく、今日は今年の仕事納め。そしてそして今週末には年が明ける。年始早々には後任に引き継ぎをして、1月12日の夜にエジプトを離れる。既に航空チケットは購入してあるし、超過荷物のバウチャーもゲットした。アメリカのビザも取得済み。ワクチン接種証明もある。後は引っ越し荷物を輸送業者に出して、PCR検査を出発前日に受ければそれで5年弱のエジプト生活が終わる。あと2週間。いよいよカウントダウンだ。

 次の任地はロサンゼルス。そう言うと、10人が10人ともこの人事をうらやむ。私自身も勿論、小躍りするくらい嬉しいし、さんざ苦労させられたエジプトを、というかエジプト人から離れたい。でもなんだろう。モヤモヤする気持ちがどうしても晴れない。

 世界がコロナ禍に陥ってから既に2年弱。この間、世界中のあらゆる場所であらゆる人たちがストレスを溜めて生き残ってきた。辛いのは自分だけじゃない、皆んなそうなんだという自己暗示だけを頼りに。だからコロナ由来のストレスは、モヤモヤの原因から差し引かなきゃならない。

 だとすると、他に何が原因だと言うのか。仕事は確かにスッキリしない。今日言ったことが明日のうちに片付くようなお国柄ではないから、どうしたって後任に頭を悩ませてもらわなければならない課題を残してしまう。自分の中でやり切った感を持ちきれない理由はおそらくそこだ。なんだかんだ言って、昔かたぎの仕事人間なんだろうな。

 でもそれだけか。いいや、やっぱり数えきれないくらいゴルフや酒を共にした仲間から離れるのが寂しいんだ。似たような苦労をそれぞれの環境で耐え、乗り越えてきた同志、いわば戦場で同じ窯の飯を食った仲間だ。思い切り後ろ髪を引かれている気がしてならない。

 そんな折、エジプト人スタッフたちから思わぬプレゼントを贈られた。ギザの3大ピラミッドを模したガラスの置き物。透彫が施してあって、なかなか素敵だ。それから、仕事で大いに世話になった一流ホテルの営業マンからも、エジプト最後の晩は是非当ホテルにご宿泊ください、悪いようにはしませんとの有り難いオファー。公私共に苦労させられた思い出ばかりのエジプト人が、最後に嬉しくなるようなことをしてくれる。少し泣ける。

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