2018年5月30日水曜日

イフタールで太る

 絶賛ラマダン中です。
 世界中のイスラム教徒たちが断食をするラマダンの期間中、日没と共に一斉に飲み食いを始めるわけですが、その食事のことをイフタールと言います。
 イフタールは、家族で食卓を囲むばかりではなく、社交の場としても広く使われるイスラムの食文化と言って良いでしょう。
 海外駐在する者として、日ごろ仕事でお世話になっている関係各方面の担当者たちを招待し、食事会を開催するのも、この時期の大事な仕事のひとつだったりします。
40度を超える日中に一滴の水すら口にしておらず、しかも腹ペコの状態ですから、みんなエジプト人とは思えないくらい、約束の時間をきちんと守って集まります。普段もこうあってほしいんだよな。
 昨日の日没は18:49。先ずは水又はマンゴージュースで喉を湿らせてから、小皿に盛られたデーツをひと口。これがイフタールの作法だとか。
 料理を皿に盛ると、一心不乱に黙々と食べます。折角なのでいろいろ仕事や仕事以外の話もしたいんだけどなと思うところを、ぐっと我慢します。だって皆んな、とにかく食べたいんだもん。さすがに邪魔しちゃいけない。
 レストランやホテルでは、特別にイフタール料理が用意されます。と言っても、何がどう特別なのか、よく解りません。いつものエジプト料理と見た目ほとんど変わらないし。メニューはやっぱり肉料理が中心。お店によっては卓上バーベキュー的な感じでソーセージなどの各種肉が出てきます。あ、豚はもちろんありませんよ。
 すごく甘いけど割と美味しいデザートと、紅茶で締めます。お酒は1mmもありません。
 それにしてもこのイフタール料理、量もカロリーも相当すごいのです。お昼を食べる我々外国人は、ですからラマダン中は気をつけないと逆に太ってしまうのです。本末転倒も甚だしいですね。

2018年5月14日月曜日

ラマダンの季節

 カイロの街中では今、そこここに鳳凰木が真っ赤な花を咲かせています。日本の桜の木よりも一回りくらい大きな木ですから、綺麗というより結構なインパクトがあります。
 これを火炎樹だと言う人も少なからずいるようですけど、ちょっと調べてみたら、同じく真っ赤な花をつけるのですが、似て非なるものだと分かりました。マメ科の鳳凰木には、50センチほどもあるサヤエンドウのような形の実がなります。でも、食べられないので、エジプト人はこの木にそれほどの関心はないみたいです。

 さて、桜のような薄紫の花を咲かせるジャカランダに続いて、鳳凰木の赤い花が咲いたことで、ああ、ここでの生活もぐるっと1年が過ぎたのだなぁと感慨深く思っていたのもつかの間、この17日からは聖なる月ラマダンが始まります。
 まあムスリム(イスラム教徒)以外には関係がない断食の習慣なのですけど、太陽が見えている間は一切の飲み食いができないラマダンに入ると、昼間は元気が出ないので当然に仕事の能率はガタ落ちします。人口の90%をムスリムが占めるエジプト全体がそうなので、何事も前に進みません。
 で、日没(今は日没時刻を知らせるアプリがあるんだそうです)になると、途端に大騒ぎ。毎晩がプチ断食明けなのです。お店は軒並み深夜まで営業。当然、こちらの生活もペースを合わせなければならない局面が出てきます。
 ま、何事も郷に入れば郷に従えということではあるのですけど、多くのスタッフが飲まず食わずでいるのを横目に昼飯を食べるときだけは、ちょっぴり申し訳ない気持ちにもなるもんです。でも食べますけど。

2018年5月1日火曜日

愛を込めてエジプトをディスってみる

 そりゃあどんなところでも、1年も住んで暮らせば、良い面も悪い面も見えてくるのです。それが何対何でバランスするかというと一概には言えないのですけど、今日は、海外生活でストレスを溜めない秘訣の一つとして、エジプト(及びエジプト人)のここが嫌っていうポイントを吐き出してみることにしました。
 ただし、デトックスとばかりに毒を吐くようにディスるだけでは、身勝手ですし、これを読んでいる方にとっても聞き苦しいだけの悪口になってしまいます。ですからそこは、悠久の大国エジプトに一定の敬意を払いつつ、また、ここに住まわせてもらっている一介の外国人のとしての謙虚な態度として、愛情込めてディスってみたいと思います。

【エジプト(及びエジプト人)のここが嫌】
●とんでもない慢性的な渋滞
 そりゃね、信号機の数が圧倒的に少なかったり、車線が消えていたり、道路が凸凹だらけだったり、車両を整備するためのスペアパーツがなかったり、高速道路でふつうにロバが荷車を引いていたり、交通整理の警察官はただそこに佇んでいるのが仕事だったりするからってのもあるんで、多分に同情できる面もあります。
●とんでもない交通マナー
 渋滞の最大の原因はこれ。イタリアに住んでいたときは、イタリア人の運転マナーって世界一最悪って思ってましたけど、エジプトに来てみたらイタリアなんて可愛いもんです。むしろイタリア人を見習えと思ってしまいました。でも、1年も経つと、交差点のど真ん中で人が乗り降りしてても、無理やり割り込まれても、クラクションが聞こえない瞬間がほとんどなくても、不思議とそれほど腹が立ちません。歩行者も同様で、どこでも平気で道路を横断してきますし、なんなら闘牛士みたいにスレスレで車を避ける技術を見せつけるショーマンシップ溢れる人も少なくありません。きっと、横断歩道という概念が育たない土地柄なのでしょう。
●どこもかしこも砂埃
 そりゃね、ちょっと街を外れれば周りはぜんぶ延々と砂漠ですから、道路も建物も看板もすべてが埃まみれになっても仕方がないですよ。いくら掃除したってきりがない訳で。でもね、ちょっとくらいは小奇麗にしようっていう気持ちがないのかな。ないんだろうな、小さいことは気にしない砂漠の民だから。砂と共に生きることが当たり前なんだろうな。飛行機に乗って上空から見るエジプトは、砂以外の色は見えません。
●停電、断水、ネット回線
 とにかくライフラインのインフラが全部老朽化していて、とんでもないクオリティなので、たまに雨が降ればすぐ停電、そうでなくても日ごろからしょっちゅう停電。断水もしばしば。でも、事前のお知らせなんてありませんよ。インターネット回線なんかすんごく弱いし、遅いから、つながらなくてイライラするのは日常茶飯事。夜の間中ネットがつながらないとか、コロす気かよ。でも、電気もネットもあって当然という日本人の方が、ひょっとしたら思い上がってるのかもしれません。砂漠の真ん中でここまで街づくりしてくれて有難うと、感謝しなきゃ。
●一見、人当たりは柔らかくて優しいけど、自己中で無責任でテキトーで病弱
 発想の根本がインシャラー(神のご意志のままに)なのですよ。仕事が途中だろうが平気で定時退社します。だって仕事が片付かないのは仕事が多すぎるからであって、彼らのせいじゃないんだもん。意味不明な言い訳も数多く常備してますが、いわゆる説明責任という観点からは評価すべきなんでしょう。そもそも仕事に重きを置く人生が、必ずしも豊かな人生ではないということを教えてくれています。そして、しょっちゅう体調を崩して休みます。医者に行くと医療費が高いので、薬局でアンプルを買って、その場で注射してもらうんだそうです。1本300円。そんな薬で治るわけがない。だから、彼らのせいじゃないんです。
●豚肉がない、魚が買えない
 豚は売ってません。そりゃそうでしょ。国民の90%がイスラム教徒なんですから。ないと余計に食べたくなるのが人情というものですね。でも、こちらも天邪鬼なもんで、たまに日本へ帰ってラーメン屋に行っても、チャーシュー麺は食べませんし、焼肉よりもホルモンに行ってしまいます。魚はスーパーに売ってます。けど、それを食べるのは相当な勇者か、恐れを知らないチャレンジャーだけです。エジプトでは、魚というのは港町に行った時にだけ食べる食材なのです。
●夏場はいっさいの生鮮野菜が姿を消す
 これは結構つらいです。特に青物野菜は全滅です。あるのは乾燥させたモロヘイヤとかパセリくらいか。あ、西瓜はある。しょうがないので、冷凍のグリーンピースとかインゲンとかを料理に使うのです。たまに輸入食材店にサラダ菜が超高額で並んだりするときは、運良く居合わせた人が買い占めます。青物を食べないとビタミンC不足で健康を害するというのは、先進国の人間がいかに脆弱かということを示しています。言ってみれば、エジプト人は生態系が違うということです。
●カイロ腹
 恐怖の食あたりのことです。私は暮らし始めてから3ヶ月で洗礼を浴び、半年後におかわりをもらいました。何にあたったのか、わかりません。丸1日以上、七転八倒の腹痛におそわれますが、これがガチで痛い。陣痛かってくらい痛い。正露丸も何も効きません。トイレから出られません。恐怖です。完治するまでには1週間くらいはかかります。でも、エジプト人はカイロ腹になりません。それだけでも尊敬に値します。
●ハムシーン(砂嵐)
 今年もハムシーンの季節になりました。1か月ほど断続的に発生します。ひどい日は、視界が悪いとかそういうレベルを超えてまして、直ちに健康被害が生じることを予感させる不気味によどんだ景色になります。そういうときは、一歩も家から外に出ません。ちなみに、アップル社のiOSが実にすぐれた製品であることを、ここエジプトでも思い知らされました。iphoneの天気表示を貼り付けてみました。「ほこり」って、天気の一種だったんですね。って、ホントかよ。アップルにも認識されてるハムシーンすげえ。
たぶん、そのうち第2弾もやると思いますが、今日はこの辺で勘弁しておきます。