2016年9月2日金曜日

遠来の友と巡るイタリア(その4:ヴェネツィア①)

 小説「インフェルノ」の続きを追います。
 花の街フィレンツェを後にしてラングドン教授が向かった先は、水の街ヴェネツィア。因みにベニス(venice)は英語表記です。
 友人と私の中年おじさんコンビは、日立の技術が使われているTrenitalia鉄道の特急Frecciarossaに乗り、ローマを出発しました。530kmの距離を、約3時間半で走ります。ハイシーズンということもあり早めにチケットを買っていたのもよかった。料金は二等指定席の往復でなんと一人72ユーロ、8千円ちょっとですから、日本の新幹線と比べると断然お安いです。

  終点のヴェネツィア・サンタ・ルチア駅で下車。あれ?よく歌で聞くサンタ~・ル~チア♪なの?歌の方はナポリ民謡で、サンタ・ルチアは本当はナポリ湾を望む美しい景観のこと。海つながりだからって、ヴェネツィアがそれをパクってきたということなのか。

  サンタ・ルチア駅前広場にある大運河(canal grande)の水上バ停留所から、サン・マルコ広場(piazza san marco)を目指します。ちなみに、水上バス(Vaporetto。乗り合い路線ボートで、陸上のバスと同じ感覚)のチケットは、24時間有効(乗り放題)で20ユーロ。これを使い倒してヴェネツィアをくまなく回るのが賢い方法。一人でも乗れる水上タクシー(いわゆるモーターボート)は非常に料金が高いです。
 かたや、他の船では入り込めない細い運河を町並みの裏側まで行くのなら、縞々のシャツをきた船頭が手漕ぎするゴンドラという選択肢もあります。ただこれは観光客向けで、風情たっぷりながらも30分80ユーロと非常にお高い。

  さて、ラングドン教授はサンタ・ルチア駅のひとつ手前で電車を降り、水上タクシーでサン・マルコ広場に直接乗り付けるというブルジョアぶりを見せつけてくるのはともかくとして、教授の行き先は広場に面した荘厳なサン・マルコ寺院。ここにある4頭の馬の像(quadoriga)が事件解決の鍵を握ると踏んだラングドン教授の読みは、しかし外れるわけです。ところで、お目当ての4頭の馬の像は、寺院の正面入り口の上の方、つまり広場に向けてテラスに置かれているこれ(下の写真)のことではありません。


  寺院内部から更に追加料金を払わなければ進めない区域にまで行くと、このテラスの内側の影に、本物の4頭の馬の像が置かれています(ただし撮影禁止)。1204年の第4回十字軍遠征に参加したヴェネツィアが、コンスタンティノープル(現在のイスタンブール)の競馬場から略奪!してきたときには右から2頭目の馬の足が折れていたのですが、その後、折れた足の先だけがイスタンブールで発見され、はからずも略奪の歴史が証明されてしまったというシロモノ。ただし、バレたからといって返さないところがイタリア人(カトリック?)のすごいところ。
 
  ラングドン教授は、象徴学者としての自分の勘が外れたことが解った途端に、いつものようにヴェネツィアのうんちくを長々と語ることもせず、さっさとイスタンブールに飛んでしまいます。きっと、ダン・ブラウン君は今回ヴェネツィアを取材する十分な時間がなかったのでしょう。ですが中年のおじさん二人の旅は、そうはいきません。折角なのでヴェネツィアを堪能することにしました。
 先ずは、サン・マルコ寺院の隣、海に向かって建つのがドゥカーレ宮殿(palazzo Ducale)。ヴェネツィア共和国総督の公邸として建てられたこの建物は、細い運河を隔てた対岸の牢獄跡と「溜め息橋(Ponte dei Sospiri)」と呼ばれる石の橋で結ばれています。牢獄に投じらようとする罪人が最後に見るヴェネツィアの景色に溜め息を漏らしたのでしょう。地元には、恋人同士が溜め息橋の下で日没時にゴンドラに乗ってキスをすると永遠の愛が約束されるという逸話があるそうですが、これはまあ観光当局のぶっこみではないかと勝手に推測(下は、溜め息橋から運河の眺め)。

  この後は、サン・マルコ広場周辺の美術館などをゆっくり見て回り、その日は終了。あとはリストランテで名物のイカ墨やあさりのスパゲッティを食し、とっぷりと日が暮れるまで延々とBARでビールを飲み続けるおじさんたちでした。

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