2016年9月10日土曜日

遠来の友と巡るイタリア(番外編:俺の背後に立つな)

 遠来の友人とあやしい中年コンビを組んでイタリアを巡った旅の途中、斜塔で有名なPISAで、盗難被害に遭ってしまったお恥ずかしいエピソード。
斜塔や大聖堂に入るためのチケット売り場は、ドゥオモ広場の真ん中にあります。行列で我々のすぐ後ろに並んだ国籍不明の女性から入場料金の仕組みを質問され、フランス語で対応していた私はすっかり気をとられてしまいまいした。肩からたすき掛けしたショルダーバッグが背中側に回っていたのですね。
 「そんなに高い料金なら、ワタシ入るのやめるわ」
などと言って、連れとおぼしき女性二人と共に列を離れて行きました。
 さてチケット購入と財布を出そうとした刹那、ショルダーバッグのチャックが開いており、中にあるはずの財布がない。。。典型的なスリです。この間せいぜい1~2分くらいでしょうか。チケット売り場の建物を飛び出して周囲を見回すものの、そこは新宿駅かアメ横かというくらいの人また人。
 広場にアクセスする門まで走り、監視にあたっていたカラビニエリ(憲兵)、警察、自動小銃を携えた軍人たちに状況を早口で説明、なんならまだ広場の中にいるはずだからと緊急の見回りを要請しました。
 「犯人はイタリア人ではない」という当方の説明に俄然ヤル気になった治安当局、ものの15分くらいの間に、風体の似た3人組の女性たちを2組しょっぴいて来たものの、いずれも人相が違う。泣く泣くその場を後にして、徒歩15分かけてカラビニエリの所轄署に赴き被害届を提出。財布には、身分証明書、現金、デビットカード、クレジットカードなどのほか、日本を含む3カ国の運転免許証などなど多数の貴重品が。
 「日本の方ですね。大丈夫、絶対とっつかまえますから」
 頭2つくらい背丈が大きな憲兵の一人が丁寧な英語でなぐさめてくれ、名前と連絡先までくれました。珍しいことです。
被害後ただちに職場の同僚に電話で支援を求め、銀行、クレジットともにカードを即時ブロック、不正使用から口座を保全します。受領印の押された被害届の控えをもらっていますので、これを元に身分証明書その他はローマに帰ってから再発行手続きをする他ありません。
 現金約400ユーロ、これはいわゆる授業料ですから、どうでもいい。問題は運転免許証。日本のそれは次回一時帰国するまで再発行不可能(適性検査などがあるため本人出頭が不可欠)。もっと痛いのは、生涯有効なフランスの免許証。既にフランスは外国人に対する免許証発行を制限していますので、再発行は望めません。

 25年に及ぶ海外生活の中で、スリに遭ったのは実はこれが2回目。最初は15年以上前で、財布には小銭しか入っていませんでした。それが今回、絵に描いたようなスリにやられ、旅先で無一文になり、凹みまくりました。が、持つべきは友です。友人の笑顔とお金を頼りにその後フィレンツェへの一泊の旅を続行、美味しいステーキを食べる頃には、すっかり気を持ち直しました。一人だったら全部キャンセルして家に帰っていたことでしょう(と言ってもガソリン代も高速料金も払えないけど)。

 夏休みが明け、財布に入っていたあれやこれやに関係する面倒な手続きをようやく終えた一昨日、PISAの警察から電話がありました。
 「あなたの財布が見つかりました。現金以外は無事のようです。時間がかかってしまって申し訳ない」と。
 現場では警察官から「たいていの犯人は現金だけ抜き取って、カードなど足の着くものには手をつけず、財布は川に投げ捨ててしまうだろう。」と言われていました。犯人をつかまえたのかどうかは、この際あまり関係がないので聞きませんでしたけど、財布はローマに書留で送ってくれるとのこと。当方からの着払いの申し出も丁重に断られました。ああ、イタリアの憲兵も警察も、なんと素晴らしい。
 ここで自らに教訓。
・現金とカード類は財布を分けるべし。
・鞄は蓋のある開け難いものを持ち、常に視界の範囲で身体に抱えるべし。
・見知らぬ人から声をかけられたときは、特に警戒するべし。
・免許証、カードなど大切なものは全てコピーをとっておくべし。

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