2016年3月29日火曜日

ビックリの後にナルホド

 こないだローマの何気ない街中で見かけたこの車、最初は目を疑いました。型落ちのFiat Pandaには違いないのですけど、何やら後ろが出っ張っているのです。

 なんだなんだと目を凝らすと、観音開きのリアハッチに"Panda VAN"の文字が。なんじゃこりゃ。初めて見ました。家に帰ってさっそくググると、ちゃんとした市販車なのでした。
最近の日本の軽自動車よりも小っこいパンダのボディに、ほんのちょびっとだけの空間を付け加えたこの車。いったい誰がどんな用途に使うのか、咄嗟に思い浮かびません。商用としてたっぷりの荷物スペースが欲しいなら、最初からもっと大きな車をチョイスすれば良いのだし、やっぱりこれで十分に大きなラゲッジ・スペースなのかというと、そうでもない。どんどん頭が混乱してきました。
 でも、よくよく考えてみれば、ニーズには思い当たる節もあります。
 水道水にたっぷり含まれるカルキ(塩素を含んだ石灰)が引き起こす配管の目詰まりや水回り家電製品のトラブルは日常生活で後を絶たず、そのため多くの技術者たちが修理に必要な工具やちょっとした資材を積んで市街地を走り回る需要は、つとに多いのです。そんな人たちには、この程度の荷室は必要なのでしょう。
 そして、路上の僅かな隙間しか許さないローマの駐車事情に照らせば、車は小さいに越したことはない。ビルの地下を掘って駐車場が作れれば良いのだけれど、2000年前のローマ遺跡の上に街が造られたローマ市内では、ちょっと地面を掘るとすぐに遺跡が出てきてしまうもんだから、そうなると当局からストップがかかってその後何年も工事がとん挫してしまうのです。だから誰も掘らない、よって駐車難はいつまでも解決しない。
 つまり、できるだけ小さくて、けどそれなりに荷物が積める、という二律背反を満足させつつ、なおかつ実用一本なので安ければ安いほど良い、そんなニーズに実に見事にマッチする車なのでした。
 ナルホドなぁ。。。と、ひとしきり感心したわけですけど、それでも現実にはマーケットでそれほど大ウケはしなかったのでしょう。ローマに3年暮らしてて初めて見た1台なのですから。でも、ちょっと欲しかったりもします。

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