2019年8月25日日曜日

エジプトで交通事故はイコール泣き寝入り

 今日の昼間、私のプライベート運転手から携帯に着信。
「タクシーに車の脇腹を擦られました」
「で? タクシーは逃げたの?」
「いいえ。でも、お金がないから修理代なんか払えないと」
「で?」
「責め立てたら泣き出してしまいました」
「警察には?」
「タクシーの認可を取り消されたら生活できないと、余計に泣かれて」
「で?」
「周囲にいた人たちも許してやれと」
「だから?」
「放免しました」
「名前も電話番号も聞かずに?」
「だって泣くばかりで話にならないんです」
 まあ、相手の素性が分かったところで、修理代が払えるとは到底思っちゃいない。だけど、だからと言って即時に無罪放免するのが癪に障るだけなんです。
 カイロの街中は、車とバイクと人で常時溢れかえっています。信号や横断歩道なんかほとんどありません。割り込み、追い越し、なんでもありです。そこへ荷車を引くロバや馬、車スレスレで横断する勇者たちが大勢いたりします。
 そしておそらく95%以上の車が無保険です。かろうじて一部の個人や法人が保険に入っていたとしても、対人対物保険が補償する賠償額は最高(相手が死亡した場合)でも4万ポンドくらい=25万円といいます。
 タクシー運転手の月収は、せいぜい2万円もあれば良い方でしょう。自動車保険どころか、健康保険も厚生年金も未加入という人が圧倒的多数です。つまり、エジプトで交通事故に巻き込まれた場合、それはイコール泣き寝入りを意味します。新車1台が全損しようが、大怪我して入院しようが、泣き寝入りです。
 イスラーム教には、富める者が、貧しい者に施しをする「喜捨」の教えがありますが、交通事故当事者にもそれが適用されるんです。どっちが悪いか、どっちに責任があるのかなんて関係ないんです。どっちが富める者なのかという基準しか、最後は残らないんです。非イスラーム教徒にとっては、たまったもんじゃありません。
 そんな、なんでもありの道路交通事情の中、もっとも許し難いのがこれです。
ノーヘル上等、3人、4人乗りは当たり前。胸に赤ん坊を抱いたまま横向きでタンデムする母親とか、もう正気の沙汰ではありません。クフ王のピラミッド以来、4500年の歴史を誇るエジプトですが、人々の民度が先進国並みになるには、あと何千年かかるのでしょう。

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