1984年ロス五輪の柔道無差別級で山下康裕選手と金メダルを争ったモハメド・ラシュワンさんが、日本の勲章を受章しました。準決勝で対戦相手のカニばさみを足にくらった山下選手が痛む片足を引きずって臨んだ決勝戦、ラシュワン選手は山下選手の痛めた足をあえて攻めることなく、辛くも銀メダルに甘んじました。でも、結果的にこの一戦で彼は、世界中の人々からフェアプレイ精神を讃えられるところとなりました。一定の年代以上の日本人であれば、あの決勝戦はいつまでも忘れることがないでしょう。
ラシュワンさんは、おそらく日本人にとって最も有名なエジプト人のひとりであるに違いありません。リバプールで活躍するサッカーのモハメド・サラーと肩を並べるのではないか。
そして、もちろんエジプト人の間でも、ラシュワンさんは永遠の国民的ヒーローのひとりであるわけです。
エジプトがオリンピックに初参加した1912年から前回大会の2016年までの間に、エジプト人アスリートが獲得したメダルの数は通算で26個。そして、1964年の東京大会から2000年のシドニー大会までの10大会に限れば、その間に獲得したメダルは、ラシュワンさんの銀メダル唯一つなのです。この時代のメダルの価値がいかに大きいか、察することができます。
63歳になったラシュワンさん、相変わらずの巨漢です。今は足を悪くしており、杖を手放せなくなっていますが、人懐っこい笑顔が印象的で、日本人の奥様と悠々自適の暮らしをしておられます。来年には日本で足の手術を受ける予定とのことです。いつまでもお元気でいて欲しいと思います。山下さんの言葉を借りれば、世界の柔道界にとって大切な人ですし、日本人の一人としてリスペクトしています。
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