2011年11月19日土曜日

TPP考察(大真面目?)

日本国じゅうを連日騒がせているTPP交渉参加問題。オヂさんも、日本人の一人として考えるところがあります。何やら胸がザワザワするような不安にもかられます。おいおい、このブログはそんなんじゃないだろという突っ込みは、自分が一番よく解っております。けれど、日本を離れたところから見ているが故に思うこともあるのです。
 以下、すべて全くの個人的な見解であることを予めお断りした上で、三点について、ノリ突っ込みしてみたいと思います。たまにはね。

 一つ目は、参加推進派が言うところの、「国を開かなければ日本の将来はない」という指摘。バブルがはじけて以降、約20年間にわたり日本は閉塞感に包まれ、景気も税収も所得も一向に上向かない。この状況を打破し、経済を発展させ、将来の世代に豊かな日本を引き継いでいく。そのために日本は国を開き、広く東アジアの活力を取り込んでいくことが不可欠である。そのような主張ですね。
 経済的な側面、しかも輸出に着目した貿易の面だけで言えば、その主張にも頷けるところは多分にあります。しかし、バブル以降、日本全体が閉塞感に包まれていたのは、経済の状況が低迷していたことだけが本当に理由だったのでしょうか。
 確かに長引く不況とデフレは、大多数の人の日々の生活を阻む呪縛のように身体にキツくまとわりつき、だからこそ2年前に、生活が第一とバラマキ4Kを高らかに謳い上げた民主党のマニフェストに多くの国民が飛び付きました。
 しかしオヂさんが考える閉塞感の元は、それだけではないと思うのです。それまで自民党が、55年体制と言われた長期安定政権の座にあぐらをかき、戦後日本の総括と将来の確かなビジョン作成を怠ったため、政治無関心を生み出し、その結果、社会保障、雇用、農業、医療、教育といった国の骨格と言える部分に、国民一人一人が自覚のないまま大きな歪みが生じてしまった、そのことにようやく気付いた時には最早どこから治していけばよいか解らず、劇場型政治と称された小泉構造改革を称賛している間に、いわゆる勝ち組と負け組という二極構造が生み出されたことを嫌ったのもつかの間、結局勝ったのは中国であり、韓国であり、BRICSと呼ばれる新興国だった。
 従って、TPP参加の有無にかかわらず、そもそも日本は国造りを一からやり直すことが喫緊の課題として以前からあって、だから健全な国造りが出来ていないうちにTPPに参加するのはリスクが大きいと見るか、TPP参加をテコにして健全な国造りの起爆剤にするかという手法の違いなのだろうと思います。しかしながら、参加による経済効果は10年間で2.7兆円という試算がある一方、リスク計算は一切行われていません。これではどちらの手法が得策なのか、誰も判断できません。

 二つ目は、その国造りをどうするかということ。日本だけでなく、参加9カ国には9通りの国柄というものがあります。農業立国、観光立国、工業立国と、国柄は様々です。それら全ての参加国が、どうしても守らなければならないものは守りつつも、原則として同一のルールを共有しようとする以上、それぞれの国において少しずつ、或いは大胆に、国の形を変えなければならないはずです。輸出依存度や食料自給率の議論もその一環でしょう。
 日本は、TPP、更には中国を含めたもっと広範な共栄圏を想定して、日本という国柄のどの部分をどういうふうに変えていくのか、日本はこのような形を目指しましょうというビジョンを、国民的なコンセンサスの下に作り上げなければなりません。コメをはじめ農業に壊滅的な被害が生じるのではないか、国民皆保険は守られるのかといった各論も確かに大切ですが、それらを含めた総論としての国のあり方、ビジョンが、あらゆる分野とレベルで議論されることが必要です。
 また、国の形を変えるのですから、当然に大きな財政負担が伴います。東北の復興に当座必要な20兆円を捻出することにすら四苦八苦しているのが現状ですが、農業政策の大転換を補うための財源を含めた「TPP参加のための軍資金」の規模は、10年間で2.7兆円というGDPの押し上げ効果を、簡単に呑みこんでしまうものになるのではないかと思います。

 三つ目は、国の形を変えるという戦後日本にとって歴史的な転換を、民主党に任せられるのかという点。多くの国民が飛び付いた2年前の民主党マニフェストは既に破綻、普天間、尖閣、事業仕分け、唐突な消費税増税、韓流ブームと外国人参政権、そして震災・原発事故対応。国民は、自民党にやらせていても景気が良くならないから、それなら目先の収入が僅かに増え生活が楽になる期待感だけで、民主党に票を投じたのです。決して、国の形を変えるような大仕事についてまで、民主党に信任を与えた訳でありません。ましてやその大仕事をけん引する総理大臣は、国民が直接選んだ人ではないのです。
 今後、交渉参加に向けての協議を各国と行っていく中で明らかになる様々な問題点を踏まえ、場合によっては政党を割り政界再編をしてでも、TPP参加の是非、また、その前提となる国造りに対する大きなビジョンを争点とした衆参同時選挙によって、国民の総意を一つの方向性にまとめていくことこそ、今、政治に求められているのだと思います。

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