いまだ世界中の各地で、東日本大震災の追悼イベントが行われていることをご存知でしょうか。ここカイロでも毎年、日本人会が主催する追悼合唱コンサートが行われていて、今日がその予定の日でした。ところが今年はつい数日前に、コロナ感染の拡大防止のため、大勢の人が集まるイベントは当面中止すべしとのエジプト政府のお達しがあり、コンサート開催を見合わせることになってしまいました。
このコンサートに出演する予定だったグループの一つが、カイロ市内のマンシェット・ナセルという地区にあるリサイクル・スクールの子供たち。このマンシェット・ナセルという地区は、ゴミ収集を生業としている人々が暮らす、いわゆるスラム街です。
エジプトでは家庭から出るゴミの分別はまったく行われていません。市の清掃局なんてものもありません。生ゴミも不燃ゴミも全て同じビニール袋に放り込んで家の前に出しておくと、ゴミ収集人がいつの間にか回収していきます。そして、カイロ中から集められる膨大なゴミを、マンシェット・ナセルに暮らす人々が手作業で仕分けし、ペットボトルなどのプラスチックを再生資源として売り、生計を立てている訳です。
この地区の子供たちが通うリサイクル・スクールは、UNESCOと民間企業からの支援を得て設立されたものです。ある日たまたまそこを通りがかった日本の海外青年協力隊員が、誰に頼まれるでもなく子供たちとの交流を持つようになったのがきっかけで、地区からほとんど外に出たことのない子供たちに歌を教え、合唱コンサートに参加するまでに絆を深めたのだといいます。
たいへん残念なことに、子供たちが今年コンサートのステージに立つことはありませんでしたが、代わりにカイロの日本大使館でその歌を披露してくれたそうです。その様子は動画に収録され、日本大使から「何らかの形で必ず東北の人に届けます」と、直接子供たちに伝えられたということです。
震災から9年、地震どころか、あらゆる病原菌がはびこるゴミにまみれて日々の暮らしさえままならない子供たちが、想像もつかない遠く離れた東北の人々に想いを寄せて、歌を唄ってくれました。本当にありがとう。
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