2019年4月28日日曜日

最古の都メンフィス

 推定約5千年前の空気を吸いに、行ってきました。
 国家としてのエジプト最初の首都が、メンフィスです。現在の首都カイロから、ナイル川西岸を南下すること約20km。職人の守護神プタハを祀る巨大な神殿の遺跡が、今では野外博物館となって残されています。
初代国王=ファラオとして上下(南北)ナイルを統一したメネス王から、古代エジプト王朝はスタートすることになるのですが、彼が5千年前に築き、当時世界最大とされた都はしかし、今ではその街並みの痕跡を見出すことすらできません。それほど広くない野外博物館の敷地内に点在する瓦礫のような出土品のうち、どれが5千年前のものか定かではありません。代わって、遺跡を象徴するモチーフとして注目されるのは、そこから約1500年後のいわゆる新王朝時代に作られた石像やスフィンクスだったりします。
 第18王朝時代、アメンホテプ2世が作ったとされるスフィンクス。全長8mとそれほど大きなものではありませんけど、これでも見つかったものの中ではエジプトで2番目のサイズなんだとか。顔もきれいに残っています。
こちらは第19王朝時代に世界に名を轟かせたラムセス2世の巨大な石像。彼が王位に就任した際に、メンフィスを再び首都に定め、冒頭のプタハ神殿の入口に自身の巨像を建立したんだとか。ただしその後、地震により両足が折れて自立できなくなってしまったため横たわった状態で、その上から建物に囲われるようにして保存されています。
とにかくデカいです。その大きさは、誇示する権力の大きさに比例するようです。
 ひと口に5千年前といっても、まったくピンと来ないですね。ユーフラテス川流域でヘブライ人の街がメソポタミア文明にまで発展したのが、エジプトよりもほんの少し前か。日本では縄文時代真っ盛りです。
 エジプト各地で様々な遺跡を見て回っていますが、一貫して腑に落ちない点があります。縄文土器や縦穴式住居からは人々の暮らしと生活が容易に連想されるのに対し、古代エジプトのどの遺跡からも、庶民の生活感がまったく垣間見えて来ないのです。
 神々や儀式に関連する神殿などの巨大建造物、王の系譜と権力の大きさを今に残す石像、石碑や埋葬品ばかりです。こうしたものとは別に、庶民の暮らしぶりを窺わせる痕跡は、5千年という途方もなく長い時間の中で、灼熱に耐え切れず風化してしまったか、はたまた深さ数十メートルという砂の下に埋ってしまったということなのか。

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