女子プロゴルファーで河本結という選手をご存知だろうか。愛媛県出身の22歳。日体大を卒業しプロ転校後まもなく国内で初優勝すると、夢だった米ツアーのクオリファイを通って昨年からUSLPGAを主戦場としていた。明るくハキハキしていて、キレの良いスィングをする。髪を結ぶリボンがトレードマークの魅力的なゴルファーだ。
米ツアー参戦から1年ちょっとというタイミングで突然の撤退理由は、「海外の生活環境になじむことが難しいと感じたから。海外での生活は自分の思い描いていた世界とは違い、想像以上にストレスを感じました」さらに「ゴルフに対して悩むというよりは、移動はもちろん、生活環境や当たり前なことが日本と違うこととか、そういう悩みに対して向き合っていた」「甘かったし、超カッコ悪いけど決めました」と吐露している。
いわゆる「パリ症候群」(wikipedia参照)と呼ばれる精神状態ではないかと推測される。早い話、憧れや幻想を抱いて渡航したものの、いざそこで生活をしてみた結果、ままならない厳しい現実とのギャップに苛まれて鬱になる状態だ。プロとはいえ、若干22歳の若い女子。たとえコーチやチームの人たちが周囲にいたとしても、所詮は職場の同僚。孤独を感じる場面は多かったに違いない。
翻って、このオジさんは、かれこれ30年近くに及ぶ海外駐在歴を重ねてきている。直近で日本を離れたのは12年以上前のことだ。30年の海外生活を通じて、海外に向いている人と向いていない人の双方をたくさん見てきた。その中で、一般論として海外生活を長持ちさせる方法は、ざっくりと二つあると思っている。一つは、友だちを作ること。もう一つは鈍感力。
なあんだそんなことかと思われるかもしれない。が、突き詰めるとこの二つに絞られるというのが持論なんです。まず、友だちは、職場の外に作らないと意味がない。職場の同僚だと、酒を飲んでもスポーツを共にしても、ついつい仕事の話になってしまう。つまり、年がら年中、頭の中が仕事のことばかりになってしまう。これではストレス解消にならないんです。しかも、同じ職場ということは、同じ組織のバックアップを受けて同じレベルの生活が成立している同じ立場にいるので、一人駐在など自分と異なる環境で頑張っている人の苦労や工夫を知ることができない。住む世界も考え方も狭くなってしまうのです。
鈍感力というのは、生活様式、言語、文化、社会経済インフラ、サービスなどありとあらゆる要素がこちらの期待通りには全くいかないことを、いかに鈍感にやり過ごしてストレスを蓄積しないかという、自分自身の心の操縦方法のことを指します。「現地の生活のし易さは最初から期待しない。物事がうまく進まないのが当たり前」というふうに腹を括ったスタンスが取れれば、随分と気持ちは楽になるものです。