イスラーム教の人たちの間で行われる断食の習慣(ラマダン)が5月6日に始まってから、最初の週末を迎えています。
もとより、アッラーの神から啓示された言葉を人々に伝承した預言者ムハンマドが、メッカからメディナへと移動した年とされる西暦622年を元年とするイスラム歴(太陰暦=ヒジュラ暦)の第9の月にあたり、新暦では毎年11日ずつズレて早くなります。ムスリムたちは、日の出から日没までの間はいっさい食事をとらず、水も飲まない、タバコも吸いません。
なんで断食なのかというと、ムハンマドが神の言葉として記したコーランの教えの根幹にある六信五行(6つのものを信じ、5つの行いをしなさいという教え)に説かれているからです。六信は神、天使、啓典、預言者、来世、天命。五行は信仰告白、礼拝、巡礼、喜捨、断食。つまり、天国に行くために神や預言者を信じるのであれば、毎日5回の礼拝や、生涯一度のメッカへの巡礼などに加えて、富める者は貧しい者に施しをしなさい、さらに断食をしなさいということです。
イスラーム教では、人の左肩には善行(日々の礼拝を怠らないなど)をカウントする天使が、右肩には悪行(酒を飲んだなど)をカウントする天使がそれぞれ乗っていて、死後、最後の審判の際に、善行の数が悪行の数を上回っている場合に、天国に行けると信じられています。ただし、キリスト教のように、生きている間に懺悔することなどによって罪の一部が赦されるといったことはなく、自分のカウントがどうなっているかを生きている間に知る方法はありません。なので、信者たちは、天国に行けないリスクを畏れて、ムハンマドが説いた神の教えをせっせと守るわけです。
因みに、最後の審判を受けることなく天国に直行できる唯一の例外的な方法があります。聖戦(ジハード)です。そしてそれが、世の中からテロがなくならない理由です。
さて、ラマダン期間中、日没と共にとる断食明け最初の食事のことを、イフタールと呼びます。正式にはデーツなどの甘いものをちょっとつまんで水を飲み、礼拝をした後に伝統的な料理を並べて食事となるんだそうですけど、多くの人は「待ってました」とばかりに、いきなり肉料理などをむさぼります。そして、夜明けまでの間に数回に分けて、翌日の日中いっぱいお腹が空かないよう、文字どおり食いだめをします。日中は閑古鳥が鳴いていたお店も、深夜まで営業しています。
で、昼間はなるべく喉が渇いたり空腹にならないよう、仕事はミニマムしかしませんよという態勢。なのに、夜になるとこれでもかというくらいに飲み食いするもんですから、約1か月のラマダンが明ける頃には、多くの人がさぞ痩せているかと思ったら全然そんなことはないわけです。むしろ、不規則な時間帯に不摂生なレベルで飲み食いするため、かえって太るという人が少なくない。夜の食事を少なくする一般的なダイエットとは真逆を行くわけですから、まあ当たり前なのかもしれません。
でもそれって、ムハンマドが教えたかったこととは随分趣旨が違っちゃってるんだろうな。