欧州クラブのプロ・サッカー選手はホントに忙しいのです。
自国の国内リーグ(イタリアならセリエ)の試合はもちろんのこと、欧州チャンピオン・リーグ、ヨーロッパリーグ、ワールドカップ予選、各国杯(イタリアならコッパ・イタリア)、更に選手によってはオリンピックのオーバーエイジ枠で代表戦と、身体がいくつあっても足りません。クラブ側も、そんなこんなで様々な試合のために、また、相次ぐ怪我や累積の警告などによっても、しょちゅう主力選手が抜けてしまいます。そのため、各チームとも一軍を2つ作れるくらいの選手を揃えておく必要に迫られます。
そんな中、我らがASローマでこのところ気を吐いているのが、背番号4のラジャ・ナインゴラン君。
全身の肌を埋め尽くすタトゥと、色形が微妙に変化するモヒカン・ヘアがトレードマークのベルギー人MF。ベルギーといっても、インドネシア人の父とフラマン(オランダ語圏ベルギー)人の母の間に生まれた28歳。その昔、インドネシアはオランダの植民地でしたし、ベルギーはオランダから独立した歴史を振り返れば、そのようなカップルは珍しくないのです。
見た目はご覧のとおりガチムチで、いかついです。あるオフの日、地元ブリュッセルのカフェで静かにお茶を飲んでいたら、彼を不審者に間違いないと勘を働かせた通りがかりのお婆ちゃんが警察に通報、駆け付けたお巡りさんから「彼はベルギー代表の有名な選手ですよ。チビっ子たちも、私もファンです」と笑顔で対応し、事を納めたとか。
でも、このラジャ君、幼い頃に父が失踪、残された母が独り貧しい中で子ども二人を育てたという困難な家庭に育った苦労人です。雑草のような強さ、たくましさがアグレッシブなプレイスタイルに見て取れます。ただし、ガツガツいくばかりではなく、足元でのボールコントロールも、ピッチ全体を見渡してゲームを組み立てる能力も、ゴールに対する嗅覚も非常に高いのです。そして、背中には7年前に亡くなった母親に因んだタトゥを刻む、母親思いの優しい青年でもあるのです。
昨19日に行われたコッパ・イタリアの対サンプドリア戦では、キレッキレの動きで終始ゲームを支配、浮き球からのファンタスティックなボレーとヘディングで2得点をあげました。試合も4-0でローマがホーム戦を制し、寒い夜でしたがローマニスタたちには、さながらナインゴラン祭りとなったわけです。
フォルツァ、ラジャ!
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