2013年2月21日木曜日

バイクの性別


 去る12日、フランス下院は、オランド大統領の選挙公約であった同性婚(同性カップルが結婚して養子をもつ権利)を認める法案を329対229の賛成多数で可決しました。同性婚の是非は国論を二分し、賛成派は「時代遅れの差別を終わらせるチャンス」とし、反対派は「社会基盤を揺るがし、子供の人権を無視している」などとして、両者ともに大規模なデモを展開。今後は、上院も与党が過半数を占めていることから法案は成立する公算が高いとされているものの、両性の両親を基本として作られた家族手帳など具体の制度改正に向けた法制化は難航が予想されています。

 さて、こんなニュースを読みながら、バイクの運転や模型作りから遠ざかっていることに思いを馳せるとき、バイクという乗り物を「性別」という観点から考えてみようと思い立ちました。あらかじめお断りしておきますと、いずれも高尚な考察などではなく、権威も信憑性もまったくない下世話な話ですので、そのへんはあしからず。

 言語から考えてみます。フランス語には男性名詞、女性名詞があることは広く知られています。ただ、何が男性で何が女性かという区別なり基準は、誰に訊ねても理屈で決まっているわけではないと言います。子どもの頃から生活の中で自然と使い分けを覚えるのだという説明しか帰ってきません。そのフランス語で、バイク=motoは女性名詞です。ついでに、四輪車=voitureも女性名詞。ただし、分解してパーツを個別に言う場合、例えばシリンダーは男性となります。
 因みに、イタリア語に目をやりますと、Aprilia、MV Agusta、Laveldaなどは語尾が'a'で終わっていることから、セニョリータやマリアの連想で女性のイメージがあります。一方で、Ducati、Benelliなど語尾が'i'で終わるものは、トッティなどの名前からの連想では男性のイメージです。ホンダ、ヤマハが'a'、カワサキ、スズキが'i'というのも面白いです。

 次に、時代のトレンドから考えてみます。日本のおやじライダーたちは、相当以前からバイクを「馬」に例えてきました。馬力からの連想なのかもしれませんが、「じゃじゃ馬」「愛車を駆る」などと表現します。しかもオヂさん世代では、その馬の性別は女性だというイメージを強く持っています。
 例えば7~80年代のカワサキRSやスズキGS、前出のアグスタ750ssなどに象徴されるふっくらと豊かで官能的な流線型のタンク、きゅっとお尻の上がった後ろ姿、そしてしなやかな乗り味など、名車と呼ばれた多くの車種からは女性が連想されます。アメリカ人にとってのチョッパーも、タンクにブロンド美女を好んで描くなど、女性的なとらえ方をしているのではないかと思います。ただし、昔のバイクはぜんぶ女性かというと例外も勿論あって、例えば角タンクのヤマハRDやトライアンフ・スクランブラーなどは、無骨な相棒であり間違いなく男性キャラでしょう。

 ところが、近頃のバイクときたら、腰高で戦闘的なフォルム、眼光鋭く睨みつける異形ヘッドライト、アスリートの引き締まった筋肉を思わせる外装など、非常にシャープで、限りなく男性的なデザインが圧倒的に多数を占めているような気がします。人間の男性達は、時代の変化と共に、同性婚にみられるように、バイクにも同性を求めているのでしょうか。それともボーイッシュな女性に惹かれているということなのか。

 構造部品にもやはり性別があると考えました。幅広の太いタイヤは女性、あんこが詰まった丸いシートも女性。一方、強化された太いスイングアームや倒立フロントフォークは男性、排気管は男性の象徴を連想させます。スポークホイールが女性的なら、キャストホイールは男性的。車体をすっぽりと覆うフルカウルや一体のタンクシートが女性的であるのに対し、ネイキッドは男性的といった具合でしょうか。

 と、ここまでは男子目線で一方的な意見を披露しましたが、果たして女性ライダーにとって、バイクは男女どちらなのでしょう。女性にも人気のある125~250ccあたりのエントリー・クラスには、穏やかで優しさすら感じるデザインのバイクが多いような気がしますが、ああいうモデルはさながら最近流行の「おネエ系」男子なんだろうか。それとも女性同士が仲良くする女子会的な受入れ方をされているのか。そもそも女子の目線では、愛車であるバイクにどちらの性を求めているのでしょう。解りません。

 翻って、このように性別に拘った考察を行うこと自体、オヂさんは既に「時代遅れ」なのかもしれません。同性婚が認められる世の中が「成熟した社会」の証しであるとすれば、成熟したライダーにとって、バイクの性別なんか所詮どっちでも構わない、議論にすらならないということなのかもしれません。。。(とつぶやきつつ、今夜も男は黙って酒を飲むみたいな。)

3 件のコメント:

ラグにゃん さんのコメント...

う〜む,バイクの性別ですか。

形によって男性的、女性的に感じる事ははありますがね〜。
モト,ヴォワチェット共に女性冠詞ですか。
勉強になりました。

って、フレンチやポルトゲスで一番訳が分からないのがこの冠詞なんですね〜。

なんて事を考えながら,こちらも一杯やっています(笑)

迷走 さんのコメント...

今回の考察、非常に楽しめました。
長年可愛がっていたプジョー106の場合、
性別の無い例えて言えばぬいぐるみ的な
"子供"と言うイメージで接していました。

みやっち さんのコメント...

>ラグにゃんさん
解んなくなったら呑んじゃうのがいちばんです(笑)。酔っ払い同士なら冠詞なんて細かいことは気にならなくなりますね。

>迷走さん
楽しんでいただけて良かったです。
106はぬいぐるみですか。ははは、キュートですね。そういえば私が乗っていたゴリラは、ゴリラというよりカブトムシに乗ってるみたいでした。