2021年11月25日木曜日

辛いは辛い(からいはツラい)

  昔から辛い食べ物が苦手なのです。ひと口ふた口食べただけですぐに頭皮から汗が吹き出し始めたかと思ったらずっと止まらなくて、首から上ぜんぶがびっしょりになっちゃう。ハンカチなんかじゃとてもじゃないけど間に合わないので、タオルなしで辛いものを食べるのはあまりにリスキーだ。しかも、その後何を食べても味が分からなくなっちゃうから、お金払うのがバカらしく感じてしまうのよ。だから、わざわざ坦々麺を選んでおきながら「ぜんぜん辛くしないでね」と注文すると、店員のお姉さんからは怪訝そうな顔をされるわ、友人からは笑われるわで良い思い出がない。

 そんな私でも、蒙古タンメン中本なんかの動画を見たりすると、ちょっと挑戦してみたくなる時がある。北極は到底無理としても、蒙古タンメンくらいならひょっとしたらイケるんじゃないかと。だって、しょこたんなんかも、辛さの中にしっかり旨味があるとか言ってるし。てなことで、スーパーでこんなもんを見つけたので、買ってきて家で作ってみた。

 どうやら韓国産の輸出商品らしいのだが、真っ赤な袋に黒い火を吹いている鳥らしきキャラが描かれていて、中ボスくらいの迫力はあろうか。そして密かに「2 x Spicy」という邪悪な文字も見逃さない。

 適当に野菜とか卵とか入れちゃえばマイルドになっちゃうんじゃね?みたいなノリで調理してどんぶりに入れてみると、実際、真っ赤だった。

 食べてみた。死んだ。しかも瞬殺。こんな辛いもん、人間の食うもんじゃない。喉も舌も頭皮も全てが熱くて痛い。なのに何故か身体に震えがきて、なんなら寒くすら感じる。なんだこれ。覚醒してんの? それとも何かに転生してしまうの? そして翌朝、トイレでこれ以上ないほどにひどく後悔した。菊◯が弛緩して、腸から煮えたぎる赤いドロドロしたスープをそのまま垂れ流し続けてるみたいな感覚。猛烈に熱い。生まれて初めて、身をもって「辛い(からい)」という漢字が「辛い(ツラい)」とも読める理由を実感しましたとさ。てか、もう一袋あるんだが、どうすんだこれ。

2021年11月17日水曜日

ニッポンの魚はホントに旨いなぁ(回想)

  一時帰国からカイロに戻ってきて半月が過ぎたわけだが、祖国ニッポンで食べた魚の旨さが忘れられない毎日を過ごしている。お金は出すんで食材はワンランク上のものをスーパーで買ってきておくれと細君に頼んだところ、日本酒のアテに食卓に登場したのがこれら。


 金目鯛は一尾3,500円もしたと言って、細君はちょっと興奮気味だった。生姜と砂糖をたっぷり効かせた金目鯛の煮付けが、魚料理の中でいちばん旨いと思う。そして、旬の秋刀魚は目が濁っておらず、新鮮さを物語る。口先がうっすらと黄色みがかっているのは脂が乗っている証拠だと、素人目にも分かる。何よりほんのりと「にがみ」のあるお腹が実に旨い。徳島の友人が送ってくれたすだちを添えて、自然と日本酒が進むこと進むこと。

 そんな幸せな食生活はしかしカイロでは到底望めもしない。実に悲しい。今日は、スーパーで買ってきた鳥のローストを玉ねぎスープにぶち込んで食した。まあこれはこれで食べれなくはないのだけれど、生きていくためだけに食べているってのが嫌になる。海外勤務手当ってのは、日々こういう思いを強いられる代償と考えるようにしているよ。そうでないと精神的にもたないからね。

2021年11月6日土曜日

シン・エヴァを観てみた(今頃?)

  一時帰国したばかりの東京の家で自主隔離という名の軟禁生活を過ごしている間に、劇場で観ることがかなわなかったシン・エヴァンゲリオンを観ることができた。息子がアマゾン・プライムかなんかでアーカイブしていた奴を、iPadで。独りお留守番の昼過ぎ、飲み物、ツマミ、電子タバコなんかを周到に用意して、長い動画だというのでちゃんとトイレも済ませておき、準備万端でバッチ来いとばかりに観てみた。

 鑑賞後の感想は。。。なんだかなぁ。亡くなった嫁と再会したい一心で、世界をめちゃくちゃにしてしまった碇ゲンドウという男の執着心というか粘着力に、ひたすらドン引きしてる間に終わってしまった。いろんな人の解説動画なんかもチェックしてみたけど、どれも「あーそう」って感じで、ストンと落ちない。

 それにしても、綾波ではないレイに人間の心が芽生え始めるシーンには、萌えましたわ。水を入れすぎた風船があっけなく破裂したみたいにLCL溶液に戻ってしまったのはビックリしたけど、初老のおっさんにとってエヴァと言えばシンジでもアスカでもなく、やっぱりレイ一択なのよ。

 てなことを酒を飲みながら考えていたら、件の友人から思わぬプレゼントをいただいた。月間エヴァンゲリオン特別号。表紙も中身も綾波レイ一色。特別企画「本当にあった良い話『あなたと一緒にポカポカしたい』」が収録されているようだ。ビニール袋に入った薄い冊子だが、中身は確認していない。さらに、綾波が描かれたクリアファイルも。友人に100回くらいお礼を言った後、「まあでも、これは開けないけどね」と言い放ってカバンにしまうと、今度は友人が「えぇっ、開けないんすか?」とビックリしていた。だって、こんなもん、いつどんなタイミングで開けるってのよ。そんな心の準備はちょっとやそっとじゃできませんから。

2021年11月3日水曜日

池袋東口最後の聖地〜美久仁小路〜

  東京における私の本拠地、つまりホームグラウンドとして呑み歩く街のことだが、若い頃は中野だった。初めて一人暮らししたのも中野。サンモール街からひと筋ふた筋外れた路地で、自家製の梅干しが旨い居酒屋、オカマのママにさんざ誘惑されたバー、怖いけど優しいヤクザのお兄さん、映画に出てくるような着流しのノミ屋の兄さん、パチプロのおじさんなどなど、若いことだけが自慢の私に、大人の世界の入り口を教えてくれたのが中野だ。

 それが、ここ20年くらいは池袋に替わった。生まれも育ちも池袋という友人がいるのがいちばんの理由だが、いっとき私が王子に住んでいた時も、池袋からならタクシーで1000円ちょっとで帰れたので、銀座や新橋などの都心でやるよりも遥かに便利で、時間を気にすることなく安心して呑めたのが大きい。そんな池袋で呑むといえば、知る人ぞ知る豊田屋だの八丈島といった地元民しか来ない昔ながらの千ベロの店がある西口に専ら足を向けていたわけだが、先日、件の友人が、東口に残る最後の聖地を案内してくれた。

 サンシャインを眼前に見上げる「美久仁小路(みくにこうじ)」がそれだ。ビルの隙間に細い糸を垂らしたような100メートルほどしかない路地は、実は戦後の闇市の頃からあった飲み屋街だそうで、昨今すっかりポップになってしまった東口に今なおこんな昔ながらの風情のある通りが残っていること自体が奇跡的だ。果たしてそこでは、人情味のある小さな構えのお店がひっそりと、しかし暖かく地元客を迎えてくれる。私たちがふらっと入ったお店では、私たちよりもずっと先輩の大将と客のおばちゃんたちが、そこそこ長い知り合いみたいに話しかけてくれる。もっとも、私たち自身もすっかり初老のオヤジたちなので、彼らの側からも、見知らぬ若者に対するような警戒心を持たれることもないのだろう。良い場所を教えてもらった。今度はいつになるか分からないけど、是非また行きたい。それまで残っていてね。