2021年12月31日金曜日

還暦前夜祭なんだが

  あと数時間で2021年が終わり、新しいカレンダーがめくられる。来年は寅年。年男の私は、還暦を迎える。昔、アホな若者だった自分の目に、60歳はひどく年寄りに見えていた。なんならどうしていまだに社会人やってんのくらいに失礼な思いすら抱くことも。今こうして自身がその年齢に達しようとしている訳だが、老いを認めざるを得ない部分と、若者にこれは出来ますまいという経験に裏打ちされた自信とが共存する。

 昨日のゴルフ打ち納めもそうだった。四十代前半の若い世代が中心の12人のミニコンペ。ハンデ差で優勝こそ逃したものの、85のベスグロは還暦イブのワタクシ。9番ホールでバンカーの往復ビンタがなければ80切りも望めるラウンドだった。ドライバーの飛距離も負けてない。でもね、打ち上げでしこたま飲んだ老体には、一夜明けた今日も連チャンでプレイするのは無理ってもんです。まあでも、これまでのところは割と上手いこと「老い」と折り合いをつけてこれたのではないかな。心穏やかに還暦を迎える準備はできているつもり。

 大晦日の今夜は、日本の家族から離れて独り寂しい者同士、気の置けない仲間を家に呼んで、残っている酒と食材を一掃しながら歳を越そうという、早い話が飲み会です。コロナに明け、コロナに暮れたこの一年が終わります。無事健康で過ごせていることに感謝しなければなりませんね。どちら様も良いお年を。

2021年12月29日水曜日

エジプトを離れるカウントダウンは少し複雑な心境

  中東の国にいてクリスマスもなかろうと思われるだろうが、ここエジプトの人口の1割はコプト教という古代キリスト教の教徒なので、ホテルやレストランに行くとそれなりにクリスマスの飾り付けがなされている。まあ、とはいえ還暦手前の単身赴任のおっさんにとって、もとよりクリスマスは全く関係がないイベントだから、極めて静かに、淡々と荷造りしながらイブをやり過ごしましたとさ。

 そして有馬記念は当然に的中することもなく、今日は今年の仕事納め。そしてそして今週末には年が明ける。年始早々には後任に引き継ぎをして、1月12日の夜にエジプトを離れる。既に航空チケットは購入してあるし、超過荷物のバウチャーもゲットした。アメリカのビザも取得済み。ワクチン接種証明もある。後は引っ越し荷物を輸送業者に出して、PCR検査を出発前日に受ければそれで5年弱のエジプト生活が終わる。あと2週間。いよいよカウントダウンだ。

 次の任地はロサンゼルス。そう言うと、10人が10人ともこの人事をうらやむ。私自身も勿論、小躍りするくらい嬉しいし、さんざ苦労させられたエジプトを、というかエジプト人から離れたい。でもなんだろう。モヤモヤする気持ちがどうしても晴れない。

 世界がコロナ禍に陥ってから既に2年弱。この間、世界中のあらゆる場所であらゆる人たちがストレスを溜めて生き残ってきた。辛いのは自分だけじゃない、皆んなそうなんだという自己暗示だけを頼りに。だからコロナ由来のストレスは、モヤモヤの原因から差し引かなきゃならない。

 だとすると、他に何が原因だと言うのか。仕事は確かにスッキリしない。今日言ったことが明日のうちに片付くようなお国柄ではないから、どうしたって後任に頭を悩ませてもらわなければならない課題を残してしまう。自分の中でやり切った感を持ちきれない理由はおそらくそこだ。なんだかんだ言って、昔かたぎの仕事人間なんだろうな。

 でもそれだけか。いいや、やっぱり数えきれないくらいゴルフや酒を共にした仲間から離れるのが寂しいんだ。似たような苦労をそれぞれの環境で耐え、乗り越えてきた同志、いわば戦場で同じ窯の飯を食った仲間だ。思い切り後ろ髪を引かれている気がしてならない。

 そんな折、エジプト人スタッフたちから思わぬプレゼントを贈られた。ギザの3大ピラミッドを模したガラスの置き物。透彫が施してあって、なかなか素敵だ。それから、仕事で大いに世話になった一流ホテルの営業マンからも、エジプト最後の晩は是非当ホテルにご宿泊ください、悪いようにはしませんとの有り難いオファー。公私共に苦労させられた思い出ばかりのエジプト人が、最後に嬉しくなるようなことをしてくれる。少し泣ける。

2021年12月20日月曜日

海外生活の偉大な先輩を偲ぶ

  私がケニアの首都ナイロビに勤務していたのは25年も前のことだ。ナイロビにいた約3年の間には、長男が生まれ、アメリカ大使館がテロで爆破され、日本人学校の校長先生が金目当ての輩に襲撃され殺害されるという事件もあった。35, 6歳という若い私はまだまだ元気で、週末ともなればいろんな企業の駐在員の方々からゴルフ、テニス、麻雀、カラオケなどにお声がけしてもらい、ひたすら働いて、ひたすら遊んだ。

 そんな中でも、ひときわ異色を放つ日本人夫妻がいた。ご主人は、日本で誰もが社名を知っている一流企業を脱サラして、独りケニアに渡ってきた人。スワヒリ語を学び、来る日も明る日も地方の中学校を巡っては、整備などされていないグラウンドを駆ける子供たちを観察し、世界レベルの長距離ランナーとして育つ才能を発掘、仙台育英、山梨学院といった高校や、コニカなどの企業に繋ぐ、いわゆるスポーツ選手ブローカーだ。彼が発掘した選手の中からは、ダグラス・ワキウリや、エリック・ワイナイナといった日本でもお馴染みのメダリストも大勢輩出した。

 心ない人からは、「人買い」などと揶揄されることもあったそうだが、彼の動機はひたすら純粋かつ暖かいものだ。ケニアの地方で明日の暮らしさえ保証されない子どもたちが、自分の身体能力一つで数年後にはメダリストにまで成長する。スポーツ界の名声だけでなく、日本の企業にも就職でき、親兄弟たちを十分に養うこともできる。ケニアで食わせてもらっている自分が、こういう形でケニアにお返しできる。とにかくケニアが大好きで、良い意味で化石のように真っ直ぐな人だった。

 その人が、80歳を目前に、昨日ナイロビで逝ったと知らされた。老衰。43年連れ添った奥様の手を握ったまま静かに永眠についたと聞いた。ナイロビ生活44年。日頃からケニアに骨を埋めると言っていたご自身の言葉そのままに。

 Kさん、あなたにはついに一度もゴルフでかないませんでした。麻雀は私の方が強かったけど、いつもあなたの家で卓を囲んだ時の楽しさと、奥様の作る自家製手打ちラーメンの美味しさは、決して忘れません。何歳になってもお洒落で、いつも麦わらのハットを被り、紺色のブレザーと綿パン、足元はローファーでしたね。ついこないだまで、時折くれるメールをいつも楽しく読んでいましたよ。お疲れ様でした。ゆっくり休んでくださいね。合掌。

2021年12月11日土曜日

エジプトのうろこ雲の下で荷造り

  意外に思われる方も多いかもしれない。ここエジプトでも冬は結構寒いのです。朝晩は10度近くまで気温が下がり、風が強い日は薄手のウィンドブレイカーでは不十分。

 今朝は、寒空にうろこ雲が広がっていた。曇ること自体が珍しいエジプトにいて、うろこ雲を目にすることはそう滅多にない。遠く離れた日本の秋冬の空を思い出して、ちょっぴりセンチな気分にしてくれたので、思わず写真を撮ってしまいました。

 ときに、これって、うろこ雲でホントに合ってるんだっけと、ふとした疑問が。これがうろこ雲なら、それじゃあ、いわし雲ってどんなんだったか。モヤモヤをいつまでも引きずりたくないので、すぐに調べましたよ。結果は、同じものでした。何に見えるかという極めて主観的な判断でどちらで呼んでもよく、実は両者は同じ雲を指すのだそうです。

 寒空の下ゴルフをした後は、荷造りです。ざっと見積もって、段ボール20箱くらいで収まるだろうけど、なにせ残りひと月の間は日々の生活をしながらなので、まだ詰められないものが結構あるから、はかどらないことこの上ない。半年近く前から分かっていたことなのに今の今まで何もしてこなかったおのれの怠惰が招いていることとは言え、やや途方に暮れているのが現状。ある日いっぺんにまとめて集中して取り掛かるという無茶な計画は捨て、一日一個のペースでやっていけば最後は間に合うだろうと、これまた無計画に近いスケジュールを組んでみた。

 今日は、後任者が到着する。ホテルに突っ込んで帰ってきたら、2箱くらいは頑張ろうと今は思っている。

2021年12月5日日曜日

エジプト生活を終えるのだが(まだ観てない場所もあるのにな)

  明日、転勤の辞令が出る。数時間フライング気味の投稿になるが、まあ許容範囲だろう。これまで約4年8ヶ月ほどを過ごしたエジプトをいよいよ離れることが現実のものとなるわけだ。とはいえ、去年の3月からこれまで2年弱の間はコロナ禍で国内旅行すらほぼ出来なかったから、まだ観ていない場所がたくさん残っている。楽しいことばかりではないエジプト生活ではあっても、そういう意味では後ろ髪を引かれる気持ちがないと言ったら嘘になろう。

 そんな折、古代遺跡の宝庫ルクソールで先の11月25日、古代エジプト考古学史上たいへん大きな意味を持つイベントが行われた。カルナック神殿とルクソール神殿を結ぶ全長約2.7kmの「スフィンクス参道」が、長年に及んだ修復を終え、お披露目された。参道の両脇にはアメン・ラー神の守護とされる雄羊の頭部を持つ小型のスフィンクスがずらりと1,000体以上立ち並ぶ。私もここへ2度訪れたのだが、その頃はまだ参道に崩れた瓦礫が散乱していて、途中で途切れていた。それでも、日本からやってきた女子たちは、ライトアップされたルクソール神殿の夜景に涙していたっけ。2つの神殿が参道で繋がれ、3,000年以上前の新王国時代の栄華を想起させるであろう壮観な景色を、是非この目で観てみたい。果たしてエジプトを出発する前にそのチャンスがあるだろうか。

 さて、後ろ髪も悪くないのだが、転勤ということはつまり、日本に帰国することなく次の海外ポストに向かう身なのです。そして私が次に行くのは、なんとアメリカ西海岸。ロサンゼルスだぜ。まあ正直なところ、どんなにポーカーフェイスを装わなきゃと努力しても、滲み出てしまうニヤニヤを隠しきれません。大谷翔平クン、お待たせしました(待ってないか)。ようやく君が100マイルのストレートを投げる姿を、そしてセンターオーバーの大ホームランを打つ姿を、アナハイムのボールパークで応援することができるんだよ。こんな素晴らしいことがあるだろうか。ハァハァ。

 いや、待て待て、モチつけ。出発までにはまだひと月ちょっとある。その間に、引っ越しの荷造りをして、後任との引き継ぎをして、山のような書類をファイルして。。。あれ?間に合うのかしら。