2020年12月17日木曜日

涙は出なかった鬼滅

  豊島園が潰れても残った映画館で、鬼滅の刃を観てきた。初老の夫婦で仲良く、歩いて10分程度の距離なので、空いてるであろう朝一番の上映を狙って行った。

 鬼退治という日本の古典をベースに、タレントの揃った隊長(柱)たちが各々の刀で技を駆使し戦うという「ブリーチ」とよく似た設定。家族愛を大切にし、小難しい漢字を多用する。特に目新しい要素は見当たらないのだが、何がこんなにもウケているんだろうか。絵の綺麗さ、描写の細かさなら、ジブリや新海モノの方が遥かに上だ。ストーリィ性ならエヴァンゲリオンに遠く及ばない。では何なのか。


 おそらく、炭治郎や柱たちの「他人に対する無限無償の優しさ」なのではないかと思う。このコロナ禍で、人々は他人に優しくなれているのだろうか。自分自身はどうなんだろう。自らを犠牲にしてまで他人を守ることができるかと問われれば、ノーだろう。感染の恐怖から自分を守ることで精一杯だ。もちろん、心技体を鍛錬し強くなり敵と戦えば他人を守ることができるアニメの世界とは随分と次元が異なるのだが、子供たちに「強く優しくなれ」という道徳的な教えが伝わるのであれば、それはそれで大いに喜ばしいことだと思う。もっとも、この作品を観て涙するかと言われたら、58歳のオジさんにはそこまでの純真さは残ってなかったのが正直な話で、でもそれはそれでちょっと残念ではあったかな。

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