2023年10月22日日曜日

カリフォルニア・ワインの深淵を覗く(NAPA)

  ちょっとお酒にお詳しい人なら、カリフォルニア・ワインと言えばNapa(ナパ)でしょと、すぐに連想できるくらい有名な訳ですが、正直、アメリカ生活を始めてからいちばん嬉しい誤算と言える発見が、ナパ産ワインのコスパの良さでした。フランス、ドイツ、イタリア、オーストラリアなど世界各地から持ち込まれた葡萄の品種を上手に使って、白も赤もなかなかに美味しく仕上げているものが多く、その割に20〜30ドルというお手頃のレンジで十分に楽しめるのです。もちろん、ボルドーのように何年も寝かせて熟成を楽しむというところまでは及ばないにせよ、ミネラルを多く含む山間の広大な土地と、安定して降り注ぐ陽の光、この2つがあればここまでのワインができるんだなぁと、いたく感心するのでした。

 ナパのワイン街道とでもいうのでしょうか。全部のワイナリーを回りきれないので、的を絞って訪ねるのが良いでしょう。
 今回の旅のメインに選んだのは、ここ。Silenus Winery。予約していたテイスティングの時間に訪れると、スコットさんという私と同い年くらいの社長さんが奥からニコニコして現れ、突然ペラペラと日本語を、しかもたいへん流暢な関西弁で話し始めるではないですか。もうびっくり。企業戦士として日本に7年駐在していたという日本通、脱サラしてワイナリー経営に転身、奥さんは京都の方だとか。なるほど。ハナさんという気立ての良い女性ソムリエが、懇切丁寧にテイスティングの解説をしてくれて、充実した大満足のひとときでした。こういうことがあるから旅はやめられない。
 これは何の品種かな。たわわに実って、もうすぐ収穫でしょう。自社の醸造工場を持つこのSilenusワイナリーは、周辺のいろんなワイナリーからも受注し、年間実に6万ケースもの生産量を誇るのだそうです。

 山脈と山脈の合間に広がる〇〇バレーと名のついた細長い土地に、見渡す限りの葡萄畑が続いています。この辺りはずっとこの景色。

2023年10月9日月曜日

カリフォルニア・ワインの深淵を覗く(ソノマ編)

  9月の最後の週に滑り込みで遅い夏休みをもらい、かねてから行きたかったサンフランシスコ方面に足を伸ばした。ロサンゼルスから約350マイル=560kmは、東京〜大阪とほぼ同じくらいの距離感。高速道路を渋滞なく走ることができれば5時間半ほどで移動も可能ではあるが、若者じゃないんだから往路は無理することなく途中の街で1泊し、翌日夕方にゆっくり着いた。ただ、やたらと坂道だらけで道も複雑なサンフランシスコ市内を避け、橋で海を渡ったオークランド側に宿を取ったのでした。

 今回の旅の目的はなんといっても、カリフォルニア・ワインの真骨頂である、ナパ(Napa)とソノマ(Sonoma)を訪れることだ。日頃家で飲んでいるワインは決して高いものではなく、むしろ知名度が低いという理由だけで20〜30ドル程度のお手頃の価格レンジに収まっているナパやソノマのワインたちだ。カリフォルニア・ワイン最大の産地というのは、いったいどんなところなんだろう。その深淵を覗いてみたい。

 まずはソノマ。オークランドから小一時間ほど車を走らせると、景色は山の合間に広大な葡萄畑が連なるものへと変わっていく。大小数十のワイナリーが点在するソノマのいちばん北、Russian River沿いにあるFransis Ford CoppolaWineryを目指した。そう、映画「ゴッドファーザー」や「地獄の黙示録」で世界的に有名なフランシス・コッポラ監督が経営するワイナリーだ。コッポラさん、84歳の現役実業家です。

 まあ立派な門構えの入り口を進むと、小高い丘の上に瀟洒な建物が見えてくる。受付で丁寧に案内された館内はさながら博物館だ。そして、予約してあったテイスティングは、日頃家では飲めないリザーブものばかりを5種類という嬉しい内容。どれもやっぱり抜群に美味しいし、ソムリエの説明にも隙がない。そしてそこからの流れで昼食。記念のお土産もちょこっと買ったりして、観光地としても実に満足度が高い体験でした。