2017年9月17日日曜日

何かしっくりこない

 広く国民に愛されたホンダ・モンキーの生産終了という悲しいニュースは、バイク好きやプラモデラーだけの関心事ではありますまい。
 先の8月末をもって、50周年アニバーサリーモデルを最後に、二度と新車を買うことが叶わなくなったモンキー。限定500台に全国から予約が殺到、抽選となったわけですが、それにしてもそのお値段。ひとつ前のクマモンが税込み約33万円、白赤ツートンのアニバーサリーが約35万円、クロムメッキのスペシャルに至っては約43万円。ネットで見ると、既に高額プレミア付でオークションに出回っており、平気で60万円を超える値札がついています。
さて、私が人生初めてのバイクとしてホンダ・ゴリラを購入したのが高校生の頃、40年近く前のことです。漫画750ライダーで喫茶店ピットインのマスターが乗っていたモンキーよりも少しだけ高かった記憶があり、当時のお値段はちょうど10万円。
 40年前の貨幣価値を現在の市場価格との比較で一様に論じるのは、品目によって随分差があるのできっと難しいのでしょう。で、ちょっと調べてみたのが公務員の初任給。40年前と2017年の公務員の初任給を比べると、約1.7倍になっていました。高卒公務員の初任給が当時8万5千円のときにモンキーが10万円。つまり給料の約1.18ヶ月分。長期月賦を組みましたよ。かたや現在の初任給14万5千円に対して上のアニバーサリーモデルの税抜き定価(40年前は消費税がなかったので)32万6千円は約2.25ヶ月分に相当します。税込にすると約2.43ヶ月に達します。
 では、この40年の間に、モンキーにそれだけの技術革新が導入されたかというと、実はさっぱりです。大きく変わったところといえば、キャブがインジェクションになったのと、バッテリーが6Vから12Vになったくらいではないでしょうか。
 ホンダさんは、モンキー終了の理由を、新たな排ガス規制に対応しきれないからとしています。本当にそうなのでしょうか。車離れ、バイク離れが叫ばれる昨今、やはり最大の原因は販売台数の落ち込みにあって、落ち込みの最大の理由は価格にあるのではないでしょうか。現代の若者たちが初任給の2.4倍を払ってまでモンキーを買うかというと、それは到底無理な相談というものです。
 ホンダのみならず、バイクメーカー各社さんにおかれては、今一度、人とバイクの距離感をこれ以上に広げないような価格設定と、そのためにも技術開発はほどほどに留める勇気を持ってもらいたいと思います。

 他方で、ファンの要請を背景に、四輪も二輪も一部では過去の名車が復活する傾向がありますね。86しかり、スープラしかり。カワサキからは間もなくZ1(Z900RS)が復活すると言います。確かにティアドロップのタンクや特徴のあるテールカウル、2連メーターや4本マフラーにその面影を見ることはできます。大型バイクは今や排気量も様々ですから、わざわざ750ccにスケールダウンしたZ2を出す必要すらないのかもしれません。
 でも、どうでしょうか。エンジン、前後サス、ブレーキ、どこもかしこも最新テクノロジー満載という印象しかありません。確かに良くできているのでしょうし、動力性能的にも相当のお値段を払う価値はひょっとしたらあるのかもしれませんけど、「ああ、懐かしい」とか、「やっぱバイクはこれだよ」という情緒に訴える感想は出てきませんし、何より若者にはおいそれと手の届かないお値段設定に違いありません。若い頃に買うことができなかったけど今ならノスタルジーに大金を突っ込めるオジさんたちがターゲットなのでしょう。
 ひとことで言うと、モンキーも、Z1も、何かしっくりこないのです。
 やはり、乗り物それだけではなく、ツールを超えて生活の中で時間と思い出を共にする相棒、そのために必要なだけの現実的な性能、若者にも求めやすい価格、そういった人とバイクの近い関わり方をあらためてデザインし、スタイルごと提案することが、今の時代に要請されているのではないかなと思います。 

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