2017年5月21日日曜日

フンコロガシの話

 カイロはいよいよ暑くなってきました。気温は連日30度を大きく上回っています。暑くなると元気になるのが虫たちで、我が家にも数は少ないながらもハエ、蚊、蟻、何ていうんだか分からないすごく小さな蛾みたいなやつ、それに、Gまで出没します。日本のみたいな黒くて大きいG、ひたすら恐怖です。
 さて、実はエジプトには、古代から人々に太陽の神として崇められている虫がいます。フンコロガシ(スカラベ)です。虫界最強と言われる後ろ脚で糞団子を転がす姿が、Gなどと比べると何とも愛くるしいと言ったら、えこひいきだろうか。
古代エジプトの有名な太陽神「ラー」の姿には、「朝のケプリ、真昼のラー、夕刻のアトゥム」の3形態があり、「日の出」を表すケプリ神は、顔がフンコロガシという衝撃的なビジュアルをしています。古代の絵画にもたくさん登場しますし、宝飾品のモチーフとしてもたいへんにモテはやされています。
ところが、そんな古代エジプトの有力な神様が、実は現代の日本でも現役で活躍しています。しかもゲームの世界で。ご存じの方も多いだろうパズドラに、暁天の蒼空神ケプリというモンスター・キャラがいるのです。おじさんゲームやらないのでよく解らないんですが、高校生の息子は知ってました。こんな可愛らしい萌えキャラなわりには結構強いみたいです。しかも攻撃手段は糞をコロコロ転がすんだとか。

 さて、そもそもフンコロガシはなぜ糞を転がすのかというと、エサとして自分で食べるためと、糞の中に卵を産み付けるための2つの目的があるんだそうです。しかも、自分が確保した糞を仲間のフンコロガシや他の虫に横取りされないよう、なるべく遠く離れたところまで効率よく運ぶ、そのために団子状に丸めて運ぶのです。まあここまでなら昆虫の習性として解らない訳ではない。でも、これはどうでしょう。
 2013年、あのナショナル・ジオグラフィックが紹介した論文によれば、アフリカのフンコロガシは天の川を手がかりに方位を知るナビゲーション能力を持っているというのです。他のいかなる生きものに見られない特殊な能力です。また、他の昆虫のように物理的な道標を利用しない点でもフンコロガシは珍しいのだとか。たとえば、夜は月を主な手がかりに移動する蛾も、月のない日中はモノを道標に使います。しかし、フンコロガシは赤い納屋や木の幹があるところを左に曲がったりはしません。あくまでも空に注目する。たとえ曇りや空が見えない状況においても、フンコロガシのナビゲーション能力はちょっとは鈍くなるものの、それでも物理的な道しるべを頼りにしないんだそうです。
 七夕生まれのおじさんとしては、常に天の川を見つめるフンコロガシに運命的なものを感じ、大きな関心を寄せざるを得ないのです。

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