2017年1月31日火曜日

お水の話

 お水の話、と言っても、水商売のことではありません。
 ローマの街中には、あちこちに水飲み場を見つけることができます。その形は様々で、もちろんタダ、もちろん飲料に適しています。どころか、こうした水飲み場の水は、ローマの地下深いところ(つまり2000年前の古代ローマの地層の更に下)から組み上げる井戸なので、年中とても冷たく、しかも美味しいことで知られています。
 夏の暑い時期、遺跡や教会をめぐって歩き回ると、たちまち汗だく、喉もからから。キオスクでミネラル・ウォータを買うよりも、水飲み場を見つけた時にすかさずペットボトルを満たすのが賢いやり方。
 老いも若きも、犬も猫もカラスも、みんな公平に水飲み場の恩恵にあずかっているのです。こんなところは、イタリアの懐の深さだと思わされます。

 そして、リストランテに入ると、必ずお水はガス入りですか?ガスなしですか?と聞かれます。
 こればかりは好みなので、どちらが良いということではありませんが、私はガス入りを好んで飲みます。しかも、北イタリアの温泉地を産地とするサン・ペッレグリノが大好き。創業100年を超える老舗ということもありますが、かなりの確率でこれが出てくることからも、広く愛されていることが判ります。
 ガス入りというと、料理にはちょっと合わないというか、料理を邪魔してしまうのではないかと警戒する方もいると思います。が、サン・ペッレグリノは、その爽やかな喉越しで、瞬間的に口の中がリフレッシュされる心地よさがあります。必ずしも無味無臭という訳ではなく、癖になるテイストと言って良いでしょう。
 日本でもちょっとしたレストランならあるでしょうし、大きなスーパーなどで買うこともできると思います。是非お試しあれ。できればペットボトルではなく、ガラス瓶のものをお勧めします。

2017年1月24日火曜日

転勤します

 本社から転勤の辞令が出ました。エジプトに転勤せよと。
 2000年の古都ローマから、こんどは15000年前まで時計を遡ることになります。
中・高校生の頃、UFOとかナスカの地上絵とか世界の七不思議とかそういうジャンルが大好きでした。雑誌「UFOと宇宙」や「ムー」を愛読していたくらい。実はその頃から今に至るまでの何十年にもわたり、生きてる間に一度はピラミッドやスフィンクスをこの目で見てみたいと、心に思い描いてきたのです。ですが、よもやそこに暮らすことになるとまでは、正直なところ想定していませんでした。
 ローマを去るのは3月のはじめ。その前に、2月にちょこっとだけ出張してきます。ピラミッドとの初対面に、今からドキドキです。

2017年1月20日金曜日

ナインゴラン祭り

 欧州クラブのプロ・サッカー選手はホントに忙しいのです。
 自国の国内リーグ(イタリアならセリエ)の試合はもちろんのこと、欧州チャンピオン・リーグ、ヨーロッパリーグ、ワールドカップ予選、各国杯(イタリアならコッパ・イタリア)、更に選手によってはオリンピックのオーバーエイジ枠で代表戦と、身体がいくつあっても足りません。クラブ側も、そんなこんなで様々な試合のために、また、相次ぐ怪我や累積の警告などによっても、しょちゅう主力選手が抜けてしまいます。そのため、各チームとも一軍を2つ作れるくらいの選手を揃えておく必要に迫られます。
 そんな中、我らがASローマでこのところ気を吐いているのが、背番号4のラジャ・ナインゴラン君。
全身の肌を埋め尽くすタトゥと、色形が微妙に変化するモヒカン・ヘアがトレードマークのベルギー人MF。ベルギーといっても、インドネシア人の父とフラマン(オランダ語圏ベルギー)人の母の間に生まれた28歳。その昔、インドネシアはオランダの植民地でしたし、ベルギーはオランダから独立した歴史を振り返れば、そのようなカップルは珍しくないのです。
 見た目はご覧のとおりガチムチで、いかついです。あるオフの日、地元ブリュッセルのカフェで静かにお茶を飲んでいたら、彼を不審者に間違いないと勘を働かせた通りがかりのお婆ちゃんが警察に通報、駆け付けたお巡りさんから「彼はベルギー代表の有名な選手ですよ。チビっ子たちも、私もファンです」と笑顔で対応し、事を納めたとか。
 でも、このラジャ君、幼い頃に父が失踪、残された母が独り貧しい中で子ども二人を育てたという困難な家庭に育った苦労人です。雑草のような強さ、たくましさがアグレッシブなプレイスタイルに見て取れます。ただし、ガツガツいくばかりではなく、足元でのボールコントロールも、ピッチ全体を見渡してゲームを組み立てる能力も、ゴールに対する嗅覚も非常に高いのです。そして、背中には7年前に亡くなった母親に因んだタトゥを刻む、母親思いの優しい青年でもあるのです。
 昨19日に行われたコッパ・イタリアの対サンプドリア戦では、キレッキレの動きで終始ゲームを支配、浮き球からのファンタスティックなボレーとヘディングで2得点をあげました。試合も4-0でローマがホーム戦を制し、寒い夜でしたがローマニスタたちには、さながらナインゴラン祭りとなったわけです。
 フォルツァ、ラジャ!

2017年1月18日水曜日

神様の悪戯

 昨日、阪神淡路大震災の日から22年という日本からのニュースを見たばかりですが、今日はイタリア中部の街アマトリーチェ付近を震源とするM5クラスの地震が群発しました。ここローマでも震度2くらいの揺れを少なくとも2回は体感しました。
 昨年8月の大地震で300人が犠牲となった小さな街アマトリーチェは、復興もままならぬうちに、折からの寒波の影響で1メートル近い積雪の中にあります。
大切な家族や友人を失った人々がその悲しみも癒えぬ中、寒さ、雪、瓦礫に囲まれて不自由な生活を強いられているというのに、追い打ちをかけるように再び強い揺れの恐怖に怯えています。
 同僚のイタリア人が「神様の悪戯」と表現していましたが、本当に気の毒です。個人の力では何もできないのは分かっています。地震の鎮静と被災者の安寧を祈るしかありません。

 さて、実はこのエントリが拙ブログの第900回目となりました。継続は力です。プラモデルから遠ざかっていますが、それでもボチボチ続けていきます。

2017年1月14日土曜日

ボサノヴァを聴いて静かに祈る

 大好きだったフランス人の歌手ピエール・バルー(Pierre Barouh)が去る12月28日に旅立ちました。報じられたのは年が明けてからでした。享年82歳。
 60年代フランス映画の名作「男と女」に主演した俳優でもあり、自身で「サラヴァ」というレーベルを立ち上げた音楽家でもあります。二度目の奥様は日本人。
若い頃、背伸びした音楽ばかりを聴いていた友人から勧められたことを思い出して、ずいぶん後になって買ったアルバムがこれ。
 まろみのある落ち着いた声で、耳元に語りかけられているみたいに沁み込んできます。フランス語が分からなくても、音楽の良さは何も変わりません。夜もとっぷり暮れた頃、洋酒をちびりながら、大人のボサノヴァに耳を傾けてみるのもおつなものでしょう。間違いなくずっと私の心に残る音楽を世に残してくれた巨匠のご冥福を、静かに祈りたいと思います。

2017年1月9日月曜日

寒波、しゃれにならない

 寒いです。欧州に寒波到来です。冬将軍などという生易しいものではないのです。
欧州各国で猛威を振るっている寒波による被害は、中東移民やホームレスなどの路上生活者を中心に死者数十名にのぼっているだけでなく、各地のハブ空港が軒並み閉鎖、トータルでは数百以上のフライトがキャンセルになっているなど交通インフラの麻痺、学級閉鎖は当たり前といった状況。
 イタリアでも、カラブリア地方(長靴のつま先のあたり)やシチリア(シシリー)島でも積雪を記録しているなど冷え込みは厳しく、ここローマでも雪こそ降っていないものの、朝晩は氷点下、日中でも片手くらいにしか気温が上がりません。オフィスでも防寒具を羽織ったままデスクに就いています。
 家の中は暖かいのですけど、大理石とレンガ造りの建物は、ひとたび冷たくなってしまうと、再び温めるのに相当のエネルギーを消費しなければならないので、昼間は留守でも集中暖房は入れっぱなし。こりゃガス代が嵩むわ。
 ヨーロッパが寒いときは例外なく日本も寒くなっています。皆さま風邪などひかぬよう、温かくしてお過ごし下さい。そういえば、フランスではこの時期になると、温めた赤ワイン(ヴァン・ショー)を仕事の帰りがけにバールでひっかけたもんです。恋しいなぁ。

2017年1月6日金曜日

USSJローマ支部活動再開

 今日1月6日は、祝日で仕事はお休み。主顕節(公現祭)とは、イエスキリストが生まれた際に東方の三博士が礼拝に訪れたという逸話を記念する祝日だそうですが、なんのこっちゃわかりません。
 朝起きて、ニュースを見てぼーっとしていると、昨年末からの不摂生とタバコの吸い過ぎで身体の内側が病んでいることを、これ以上見て見ぬふりするのは無理があるなぁと突然に反省。
 やおらシューズを持ち出し、ヤッケ(表現が古い)を羽織って表に飛び出しました。USSJ(ウルトラ・スーパー・スロー・ジョギング)ローマ支部の活動を、約2ヶ月ぶりに再開したのです。
 外はまだ肌寒く、軍手がなければたちまち嫌になっていたところです。決まりきったコースを、とても軽快とはいえない足取りで走ります。すれ違うのは犬の散歩をする人ばかり。なお、USSJローマ支部は、私が勝手にそう名乗っているだけの非公認組織で、会員は1名。募集もしていません。
(以下の画像はネットから拾ったもので、決して私ではありません。)
私にとってのランニングの目的は、もちろん日ごろの運動不足の解消に他ならないのですけど、より具体的には、①肺に溜まったニコチンの浄化、②発汗によるデトックス、③筋肉と持久力の維持、④ヘタレない心の育成です。
 速歩きより少しだけ速い程度のスピードで、えっ、もう終わり?という程度の距離しか走らないくせに、たいそうな4つの目的を達成できるのか。そこを疑問に思ってはいけません。プラモデラーは自己暗示能力に優れてもいるのです。

 ほどよく汗をかいたので、今度は部屋の掃除。荷造りで埃がたまった寝室がずっと気になっていたので、ベッドから毛布もシーツも剥ぎ取ってベランダではたく。掃除機をかけたら、その次は洗濯。きれいになったところでシャワーを浴び、洗濯物を干すと、もうお昼です。パスタなどの麺類をちゃっちゃと作って、ようやく落ち着いたところで、これを書いているわけです。
 ローマに住んでいたって、日々の生活は日本とさほど変わらない「日常」そのものです。毎日遺跡を眺めて暮らしているわけではありません。どんな国に行っても、当たり前の日常を送る。そんなことを普段は気にも止めないのでしょうが、実はそう簡単に出来ることではないのかもしれませんし、それが出来るのは限られた(恵まれた)国だけというのも現実です。

2017年1月1日日曜日

謹賀新年

 あけましておめでとうございます。
 本年が皆様にとり素晴らしい一年になりますように。ついでに、この拙いブログもひき続きどうぞよろしくお願いいたします。
さて、新しい年の始まり、元旦には、物事の原点に立ち返ってみるという行為が相応しいという相場観がありますね。今年は是非こうありたい、初心忘れるべからずなどと、あらたまる気持ちは、おそらく日本人だけではないはずです。
 そこで、古代ローマの人々が残した名言・格言の中を幾つかご紹介しましょう。

「ローマは一日にしてならず」(作者不明)。・・・あまりにも有名な格言ですが、実はローマ時代に作られたものではないらしい。

「すべての道はローマに通ず」(17世紀フランスの詩人ラ・フォンテーヌ)。・・・いかにも自己中心なローマ人が言ったのかと思ったら、フランス人でした。

「ローマで2番になるより、村で1番になりたいものだ」(カエサル(シーザー))。・・・2番じゃダメなんです。。。「賽は投げられた」「ブルータスお前もか」など、現代まで無数の劇中で繰り返される名科白を残したシーザー。日本ならさながら赤穂浪士の忠臣蔵のようなものか。

「始めたときは、それがどれほど善意から発したことであったとしても、時が経てば、そうではなくなる」(これまたカエサル)・・・社会風刺ですな。

「今日覚悟のできていない者は、明日になればさらに覚悟ができていない」(詩人オゥイディウス)・・・なるほどと考えさせられます。

「二度、考え直した考えがいちばん良い」(政治家・思想家キケロ)・・・余計に迷いそう。

「健全なる精神は健全なる身体に宿る」(風刺詩人ユウェナリス)・・・日本船舶振興会の人かと思ってました。

「すべての日がそれぞれの贈り物をもっている」(詩人マルティアリス)・・・これがベスト。